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リリカルってなんですか?
A's編
第二十七話 後
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てしまった、と思われてしまうかもしれない。だから、ごく一般的な理由で遠慮することにする。

「だ、大丈夫やっ! 帰ってきてもみんな歓迎してくれるはずやっ!」

 どこか必死な声で僕を引き留めようするはやてちゃん。何がいったい彼女をこんな風に駆り立てるのだろうか。何らかの理由があると見るべきなのだろうが、付き合いの浅い僕にはわからない。

 どうしたものか? と悩んでいるとおずおずといった様子ではやてちゃんが口を開く。

「……ダメ……なんか?」

 少し潤んだ瞳で、上目づかいで問いかけるはやてちゃん。その表情にはどこか見覚えがあった。それは、僕がまだ幼稚園時代のころ、親の迎えが遅くなって、一人で幼稚園に残っている子が向けてくる表情だ。その裏にある感情は、寂しさだ。一人で残されることへの恐怖といってもいいだろう。そのころから僕は、ある種の世話役的なところがあって、そういう子を残して帰ることはできなかった。よくよく考えれば、あのころは、母さんに迷惑をかけていたな、と思う。

 僕はこういう表情に弱いのだ。たとえば、小さい子供が僕の袖を引っ張って帰らないで、と言われているのに等しい。小学校に上がってからは、ほとんどなかったのだが、久しぶりに遭遇してしまった、というべきだろう。

 そして、残念なことに僕は、この表情に抗うすべを持っていない。両手を挙げて降参というしかない。

「わかったよ。それじゃ、今日はご馳走になろうかな」

 そういうしかなかった。しかし、その効果はあったようで、一時は沈んでいたはやてちゃんの表情も泣いたカラスがもう笑うといったように笑顔に変わっていた。

「そ、そか。ほんなら、早速準備せんとな」

 そう言いながら、はやてちゃんは器用に車椅子を操作して、自らの身体をキッチンへと運んでいく。もしかして、彼女が晩御飯を作るのだろうか。いや、未だに顔を出さない家族のことを考えれば、彼女が料理をすることも別に変な話ではないのだろう。小学生だから料理をしてはいけないということはないはずだ。

「あ、そうだ。僕は、ちょっと親に連絡してくるから」

 晩御飯がいらないのであれば、はやく母さんに連絡しなければならない。もしかしたら、少し怒られるかもしれないが、僕の分はおそらく親父とアルフさんが消費してくれるから無駄にはならないだろう。アルフさんは、基本的にアリシアちゃんからの魔力供給で大丈夫なはずなんだけどな……。

 僕ははやてちゃんから「了解や」という返事を聞いてから僕は廊下に出てから携帯電話を使って、家に電話した。

 電話口に出た母さんは、事情を話すと「またいつもの世話焼き癖が出たのね」といいながらも、はやてちゃんの家で食べることを了承してもらえた。しかし、僕の行動は、癖のように思われていた
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