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リリカルってなんですか?
A's編
第二十七話 後
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さえこれなのだ。いくら、毎日車椅子のタイヤを押しているはやてちゃんといえども、図書館まで来るのは相当の労力が必要だっただろう。しかも、雨に濡れる心配もしなければならないのだ。いったい、何が彼女を図書館まで駆り立てたのか。僕には謎で仕方なかった。

 だけど、そこには踏み込めない。僕とはやてちゃんはまだ出会って一時間程度しか経っていないのだ。そこまで踏み込めるほど信頼感はないだろう。

 車椅子を押しながら、コロコロと変わる表情で話を続けるはやてちゃんを見ながら僕はそう思った。

 はやてちゃんの家についたのは、図書館から歩くこと30分程度のころだろうか。はやてちゃんの家は、住宅街の真ん中にあり、庭もある一階建ての一軒家だった。もっとも、彼女の身体のことを考えれば、一階建てなのは当然のことだろう。

 僕が車椅子を押して、玄関の前まで、連れて行くとはやてちゃんは、ドアノブに手を伸ばし、鍵が開いているかどうかを、がちゃがちゃとノブを回して確認していたが、どうやら、鍵がかかったままらしい。そのことを確認するとはやてちゃんは落胆しような表情を見せた。もしかしたら、誰か帰ってきていることを期待していたのかもしれない。

 しかし、はやてちゃんはすぐに困ったような笑みを浮かべて、自分のポケットから鍵を取り出して、開錠する。がちゃ、というドアが開いた音を立てたことを確認して、僕たちははやてちゃんの家へと足を踏み入れた。もちろん、僕がドアを開けて、その間にはやてちゃんに入ってもらったのだが。

「おじゃまします」

 先にはやてちゃんを入れて、僕も玄関へと足を踏み入れると、そこは、僕の家よりも広い玄関だった。靴は靴箱の中に日ごろから入れられているのだろうか―――僕の家では、アリシアちゃんやアルフさん、母さん、父さんの靴が散乱している―――靴は、今、はやてちゃんが脱いだであろう一足しか見当たらない。しかも、玄関は、バリアフリーという段差がない作りになっていた。

 玄関と廊下を仕切る間には、おそらく車椅子を掃除するための布ようなものが敷いてあり、そこでタイヤをきれいにしているのだろう。

「ショウくん、こっちや」

 僕が初めて見るバリアフリーという作りに感心していると、待ちわびているのかリビングになっているであろう部屋からはやてちゃんが手だけだして手招きしていた。

 そもそも、ここに来た目的を思い出して、僕は慌てて靴を脱いで、きちんと揃えてからはやてちゃんに呼ばれた部屋へと足を運ぶ。

 はやてちゃんの家のリビングは綺麗に掃除されていた。フローリングに敷かれたカーペット。立派で大きなソファー。キッチンには、そのまま繋がっており、そこには食卓も兼ねているのだろう大きめのテーブルが置かれていた。特筆すべきは、家具の隙間だろうか。
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