A's編
第二十七話 前
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が、関西人はこういうやり取りが好きそうな気がする。
「それじゃ、行ってみようか」
外は、この雨だ。もしかしたら、談話室はいっぱいかもしれない。しかしながら、僕たちがいる位置からは、本棚しか見えず、談話室の様子は見えない。だから、一度、行ってみるしかないのだ。もしかしたら、空いているかもしれない。だけど、空いてなかったらどうしよう? と彼女の車椅子を押しながらいろいろと考えていたのだが、不意に押されるままだった彼女が顔を上げた。
「そういえば、まだ自己紹介もしとらんかったな」
不意に思考を中断された僕だったが、彼女の言うとおり、僕らはまだお互いの名前すら知らない状況だということに今更ながら気付いた。
どちらからするんだろうか? と思っていたが、どうやら言い出しっぺの彼女から先陣を切るようだ。車椅子に乗ったまま後ろを振り返りながら、笑顔で彼女は、自分の名前を告げる。
「私は、八つの神に、平仮名ではやてって書いて、八神はやて、いうんや。よろしくな」
彼女は、―――八神さんは、こちらが嬉しくなってきそうなほどの満面の笑みを浮かべて自らの誇らしく告げる。そんな彼女に僕も、自らの名前である蔵元翔太という名前とともに、こちらこそ、よろしく、と返すのだ。
―――これが、僕、蔵元翔太と八神はやてのファーストコンタクトだった。
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