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リリカルってなんですか?
A's編
第二十七話 前
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売されていたようだ。僕が手に取ったのは、その七巻だったわけだ。

「私もそうや。さっき、偶然、それを見つけてな。最新刊があるなんて、滅多にないからラッキーって思ったんや」

「そうだね。よくあった、と僕も思うよ」

 図書館は人気の作品は大体複数冊購入していることもあり、時々、こういうこともあるかもしれないが、それでも珍しいことである。彼女が笑顔を浮かべて喜ぶ理由もよくわかる。自分が好きな作品というのは、発刊されれば、すぐにでも読みたいものだ。だからこそ、こういう偶然を喜ぶことができる。不意に落ちてきた幸運を。

「君は、誰が好きなんや? 私は――ー」

 よほど同好の士を見つけたことが嬉しかったのだろうか、堰を切ったように喋りだそうとする車椅子の彼女。しかし、場所をわきまえるべきであろう。だから、僕は、口に人差し指をやって、静かに、というジェスチャーをやった。僕のジェスチャーでここが図書館だということに気付いたのだろう。彼女は、あわてて両手で自分の口をふさいでいた。

「話したいのは、わかるけど、少し場所を考えるべきだったね」

 先ほどの彼女よりも、小さな声で僕は苦笑しながら忠告する。おそらく、ここがどこか忘れるぐらいにこの本が好きなのだろう。彼女ほどではないが、僕もこの本は好きだ。だから、彼女の話し相手になるのも吝かではない。

「それじゃ、向こうの談話室にでも行こうか?」

 僕は、車椅子を押すために彼女の背後に回りながら、図書館に用意されている周りを気にせず話せず談話室を指さす。だが、彼女は、僕の提案に対して、信じられないものを見たという風に驚きをあらわにしていた。

「ええんか?」

「もちろん、僕も暇だったからね、むしろ、僕の話し相手になってくれるとありがたいかな」

 もともと、ここに来たのは、外が雨でサッカーが中止となり、家の中で遊ぼうにも特に遊べるものもなかったからである。このまま、何か本を選んだとしても、あまり時間はつぶせないだろう。しかも、時間はまだお昼を少し過ぎたばかり。時間はまだまだ十分にあった。少なくとも、目の前の彼女の話に付き合うぐらいの時間は。

「しゃーないな。ほんなら、はやてちゃんが付き合ってやるわ」

 いきなり尊大な態度をとる彼女だったが、その顔は、嬉しさでいっぱいに笑みがこぼれている。もしかしたら、彼女のこの態度に不快感を感じる人もいるかもしれないが、僕からしてみれば、ほほえましいことこの上ない。

「おおきに、でいいのかな?」

 彼女の言葉に合わせて、僕も知っている限りの関西弁で返してみると、彼女は、不意を突かれたように驚いたような表情をし、その直後に、にんまりとチェシャ猫のように笑った。お前もやるな、というような笑みだろうか。僕の偏見かもしれない
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