第4章 聖痕
第40話 龍の娘
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よ風。
三叉路を抜け、石材に因って補強された頑強な階段を下り、厳かな礼拝堂をイメージさせる空間を潜り抜け、更に他方へ広がるそよ風。
タバサを包み込み、アリアの外套をなびかせ、更にその奥に……。
………………。
居た。大きな何かと、小さな何か。
但し、所詮は空間を把握する能力ですから、流石に距離が離れて仕舞うと、相手が無機物か、有機生命体かの違い程度しか判らない能力ですが、明らかに岩とは違う何者かが、その風が探り出した場所に存在するのは確実だと思います。
まして、その未確認生命体が何者かは判りませんが、少なくとも、結界系の術を施す事の出来ない相手の可能性が高くなった事は間違いないでしょう。
「大体の場所は確認出来ました」
その報告に、真っ直ぐに俺を見つめた後に、少し首肯いて答えてくれるタバサ。表情は、普段通り感情を表現する事のない透明な表情のまま。しかし、その精神からは、少しの陽の気が発せられている。
そして、アリアの方は何も問い掛けて来ようとはしなかった。いや、おそらく、彼女は俺が何を為したのかを気付いていると思います。
何故ならば、彼女も精霊を友とする能力を有しているから。
先ほど、風の精霊を統べ、その精霊たちが彼女の周りの精霊を包んだ瞬間に判りました。彼女にも、精霊が付き従っている事が。
主に付き従っているのは風。更に、水。
そして、彼女の腰にした優美な反りを持つ日本刀の如き長剣が、某かの霊剣で有る事も。
さて。しかし、どうする。少なくとも、現状では敵とは思えない相手。
ただ、正体不明の生命体を調べている最中に、更に正体不明の味方が居るような状況は、流石に問題が有るのですが……。
急に黙り込んで、アリアを見つめる俺を、ただ、黙って見つめるタバサとアリア。
双方とも表情は変わらず。タバサの方は、彼女に相応しい透明な表情を浮かべたまま。
アリアの方は、意志の強さを表現しているかのような蒼き瞳で、玲瓏なと表現すべき美貌をこちらに向けるのみ。
刹那、
【東方の龍よ。我は、マジャールの地に住まう、古き龍の血を継ぐ末裔】
聞き覚えのある【女声】が、俺の心に響く。
いや、間違いない。この【念話】は、目の前のアリアから発せられし物。
【我が一族と同族の者を、シャルロット姫が異界より召喚したと聞き及び、こうしてその人物の確認に来たまで】
成るほど。確か、以前にジョルジュが俺の事を龍種。この世界の言葉で表現するのなら、韻竜だと簡単に見破った時に、この世界の韻竜が滅びていないと言う確信は有りましたが……。
そこ。竜仙郷か、水晶宮かは判らないけど、そこのお姫様がわざわざ、はぐれ龍に等しい俺を見る
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