第4章 聖痕
第40話 龍の娘
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のですが……。
少し昏い坑道内に、炎の精霊の作り上げた、熱を発生させる事のない明かりが、蒼い姫を浮かび上がらせる。
タバサが少し首肯く。おそらく、俺の意図を察してくれたのでしょう。
そして、俺の掲げていた魔術師の杖を受け取る為に、彼女が右手を差し出して来た。
俺も、彼女に手渡す為に右手を差し出す。
しかし、彼女の右手に杖が渡される事はなく、俺から差し出された魔術師の杖は、タバサのそれよりも、少し高い位置に有る右手に因って攫われて仕舞う。
そして、
「明かりを持つ役なら私が担いましょう」
口調は堅い騎士風の口調ですが、彼女の発している雰囲気はかなり友好的な雰囲気で、俺に対してそう話し掛けて来るアリア。
陰の気に支配された世界に、彼女の浮かべた笑顔は陽の気に溢れる物のように感じられた。
「それなら、アリアにお願いしますね」
少しの笑みを浮かべて答えを返した俺。そして、その直後に翠玉に封じられしシルフを起動。同時に取り出した予備の杖をこれ見よがしに振る。
そうして短い口訣と同時に、両手で導引を結ぶ。これは、シルフの能力。風を起こし、空間を把握する彼女の能力を使用して、広い範囲の捜査を行う仙術。
そう、この坑道内は、今日から三日の間、人間は立ち入り禁止に成っています。つまり、この坑道内で人間サイズの動く生命体は、ジジちゃんと、その未確認生命体のみ。
まして、正体不明の不気味な怪物がうろついている坑道などに、仕事でもないのに、祭りが開かれる日に好き好んで侵入する酔狂な人間はいないと思います。
ならば、シルフの能力で何とか探し出す事が可能ですからね。
もっとも、本来ならば、この坑道内を守護する土地神を召喚して、彼らからジジちゃんや、未確認生命体の情報を聞き出す方が早いとは思います。それに、その方法の方がより仙人らしい捜査方法ですしね。もっとも、流石に、アリアが居るこの空間内では、その捜査方法を為すのは無理でしょう。
何故ならば、このハルケギニア世界では明らかに異端の魔法に成るはずですから。
ただ、この、シモーヌ・アリア・ロレーヌと名乗った少女からは、普通の人とは違う、何か微妙な雰囲気を感じているのも事実なのですが……。
まして、俺が出会ったガリアの貴族は、吸血鬼が二人。そして、モンモランシーも、どうやら精霊を友にする能力を持っているようですから……。彼女も、何らかの特殊な家系の末裔で有る可能性は否定出来ないのですが。
いや。今は術に専念すべきですか。そう考えてから余計な思考を排除して、風の精霊の術を行使する。
そう。イメージするのは風。頬に触れ、髪をそよがせる優しい風。閉鎖され、澱んだ大気に相応しくない洞窟内を流れる、春の野に吹くそ
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