第七章 (3)
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。喋り方とか笑い方、感情表現が、日に日にリアルになっていく。これがプログラムなんだとしたら、紺野さんは本当に天才だ。そんなことを考えていると、顎に手をあてて黙していた紺野さんがもぞっと体を動かした。
「だが、困ったな」
「今困ってること、優に10件は思いつくけど。どれ?」
紺野さんは一瞬首をかくっと落とし、そのまま言葉を続けた。
「…例のMOGMOGの追跡だよ。向こうもビアンキを意識しているようだし、そのMOGMOGが発狂して、どんな行動に出るか分からない以上、ビアンキで捜索を続けるのは危険だ。…でもマスターに『何かがあった』のなら、一刻の猶予もできない」
「ハルは捜索に回せないのかな」
「んにゃ…あいつは、完成版のMOGMOGをマークしているみたいだからなぁ…。標的がビアンキからハルに変わるだけの可能性もある」
なんか考えることが多すぎて、うんざりしてきた。紺野さんにも、そんな考え疲れの気配が漂っている。場の空気をいち早く察した柚木が(一番頭使ってなかったくせに)、テレビのリモコンをとった。
「もうやめよ、疲れちゃった。めざニューでも観ようよ」
僕は朝ズバ派なんだけど…と言いかけてやめる。モノリス並みにでかい液晶が、どこか不穏な面持ちの女性キャスターをバストショットで映し出した。…いつもと違って新鮮な朝の空気に、少しまごつく。爽やかな朝の時間に好んでみのもんたを見ている自分は間違ってたような気がしてきた。
どこかの国で大きいテロがあったとか、そんな実感がないニュースを、珈琲をすすりながらぼんやり眺める。ニュースが耳を素通りするにまかせて、頭を空っぽにする。
「そろそろ、今日のわんこが始まるよ」柚木の声が、遠くに聞こえる。
「今日のミノモンタは太ってます…」
「いや、これ大塚さんだから」
「オーツカさん?」
二人の声は、実に心地よく耳を素通りする。すがすがしいくらい、どうでもいい内容だ。今日のわんことやらは、まだ始まらないのかとじりじりしていると、突然、臨時ニュースが入った。
『…今、入ったニュースです。今朝未明、都内○○公園で、会社員男性の他殺体が発見されました』
「なんだ、近所じゃないか」
紺野さんが身を乗り出す。皿を洗っていた柚木も、中断してリビングに戻ってきた。
『服装や持ち物から、都内に住む会社員・武内昇さんであることが判明しました』
……武内!?
60インチの大画面に映し出された証明写真のその顔は、昨日僕が写メで紺野さんに送った男と、とてもよく似ていた。
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