第七章 (3)
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目はなんだ、セキュリティソフトだろ!」
「だ、だって何か動いて…イヤァ!何か出てきた!!」
リンゴの右側がぞるりん、と蠢いて、赤い汁のようなものがドバッ!と溢れ出した。
「こ、これは…新鮮な果汁がこう…ドバッと…」
「あの、紺野さん…もういいから削除してよ」
「お前はまた甘いことを!さあ食えビアンキちゃん、ご主人さまのために!!」
「そ、そんなこと言ったって…ひゃあっ、また動いたっ!」
今度はリンゴの中央が横に裂け、ひきつり笑いのような亀裂が生じた。亀裂から、赤い液体がどばー、と滴り落ちる。画面はあっという間に血の海に沈みこんだ。…こんなグロいアニメーションを設定したのは誰だ。
「こ、こんなのもう食べ物じゃないですぅ…」
…そうだよな。ビアンキもそう思うよな。僕の感想、間違ってないよな。画面の大半を占めて、変な声で呻きながら血を吐くリンゴは、普通食べ物じゃないよな……。
「いやまて、なんかリンゴが小さくなっていくぞ!」
一通り血糊を撒き散らしたリンゴは、しゅるしゅると収縮を始めた。ビアンキの身の丈ほどあったのが、徐々に半分くらいになり、ついにはビアンキの手に収まる大きさに落ち着いた。血溜まりの中央に、赤黒く光る小さなリンゴが、ぽつりと消え残った。
「……よかったな、ビアンキちゃん。もう動かないぞ。これなら食えるだろう」
「………」
先刻まで動いてたビアンキは、心底イヤそうにリンゴを一瞥すると、あまり見ないようにしてつまみ上げて一口かじった。…すごくイヤそうに。
「硬っ…」
「硬い…じゃ、あれ圧縮の表現だったんだな…芹沢あたりの仕業か」
「えっ、仕様じゃないの?」
「ちょいちょいあることだぞ、プログラマーがソフトに悪戯アニメを仕込むのは」
ビアンキは、硬くてかじれないリンゴを持ったまま僕を見上げた。気のせいか、昨日の衝突で液晶がびみょうにいかれたのか、チェレステの瞳が少し濁ってみえる。
「なんかこれ、時間かかりそうだから…食べる前に、お話聞いてくれますか?」
「ああ。聞きたいな」
――ビアンキは、たどたどしく言葉を綴りながら長い話をした。ハルと話したこと、『あのMOGMOG』を見つけたこと、そして、そのご主人さまは、何かの理由で『助からなかった』ことを。ハルと交わした『僕とビアンキが同じ電子でできている』という情報を、目を輝かせて語り、狂ったMOGMOGのくだりでは、肩を落として呟くように語った。
「――追跡、しようと思ったら、電源が落ちちゃって」
「いや、ラッキーだったよ。Googleのセキュリティさえ歯が立たないようなウイルスと正面対決なんてことにならなくて…」
しばらく考え込んでいた紺野さんが、ふと目を上げた。
「ご主人さまは『助からなかった』って言ったな」
「…はい、そう聞きました」
「死
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