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Fate/stay night -the last fencer-
序章
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るその騒音を煩わしく思い、路地裏に入りながらいつもは通らない道で帰ることにした。
そうして通りがかったのは────
────整備されないまま放置されている、荒涼とした公園だった。
明らかに何かが欠如してしまっている、そんな印象を抱く場所。
この場所には昼の日中にさえ、人が立ち寄ることが無い。
ここで十年前に起きた大火災。
この公園がそうなってしまったのは、その事件が起きたときからだ。
無数の死者と負傷者を出したその事件は、今でもその傷跡を残している。
俺がこの町を知り移住することを決める、きっかけになった事件でもあった。
調べた結果として、霊脈があることも分かって居住には文句の無い土地だったのだが。
そもそもの始まり、最初にこの街に興味を抱いた因果はなんだったのか。
何故か目に止まり、何故か惹かれた。
物事など所詮はそんなものなのかもしれないが、そこに理由を求めるのは悪いことだろうか。
たとえば。
そうすることが、そうなることが。
自分の運命だったなんて、そんなロマン溢れる幻想も────────
あまりに少女めいた妄想に自嘲する。
運命なんて言葉、俺が一番嫌いなものだというのに。
らしくもない感傷、物思いに耽っていたその瞬間。
一瞬にして血の気が引いた。
寒気だとか悪寒だとかそんなレベルではない。
もっと明確な、身の毛のよだつ恐怖を抱かせるような何かが………………
「そこにいるのは……なんだ?」
すぐ背後の暗闇に、そう呼びかける。
姿は見えない。音は聞こえない。だが確実にそこに何かがいる。
まるで茂みから、肉食獣がこちらを狙っているかのような感覚。
明らかに尋常な事態ではない。
身体に備わった魔術回路が自然と開く。
魔術刻印が、主の危機に呼応して起動する。
身体で感じる危機感。意識が軋むような恐怖感。
そして本能的に感じる敵意と殺意が、相手の存在感を嫌というほど知らせてくれる。
硬直したその状態のまま、どれほどの時間が経っただろうか。
数時間にも感じられたその時の中、相手は自ら姿を現した。
黒装束、眼帯拘束具。大蛇を思わせるほどに長い、長すぎる紫髪。
獲物の肉を食い抉るためにあるであろう、両手に握られた釘のような鉄鎖。
暗闇の中、無骨な衣装など関係なく、それすらも引き立て役に過ぎぬといわぬばかりの美貌の人型。
人の形をした、何か。
そう、何かだ。
アレは決して人間でない。人間の形をしているだけの何かなのだ。
そしてソレが姿を現してからまた、幾許かの時間。
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