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Fate/stay night -the last fencer-
序章
プロローグ
PrologueU
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いない。

 しかし背負ったことだけは、揺るぎようのない事実。

 普通では使いきれない財産の他に、曾祖父さんから授かった遺産は二つある。
 一つは、いつも首から下げているペンダント……曾祖父さんから貰い受けた、最上級の聖遺物。
 もう一つは、黒守家が積み重ねた血の成果、歴史の結晶。両手首から肩口にまで刻まれた、凄絶なまでの魔術刻印。

 黒守の魔術刻印は通常の魔術師が受け継ぐそれとは別に、もう一つの役目を担っている。

 魔術刻印を聖遺物と霊的に同調・同化させ、内包された神秘や概念を魔術として行使可能にする。
 それ自体は破格の魔導技術であり、魔術協会からしてみれば封印指定一歩手前なのだと曾祖父さんに教わった。

 過去には魔術刻印と聖遺物を利用して、根源へと至る道を開こうとした者もいた。
 無論その試みは失敗し、愚かな魔術師に対して科せられたのは片手片足の喪失だったらしい。むしろその程度の代償で済んだことは安かっただろう。

 通常の魔術刻印としての役目の他に聖遺物との契約を可能とするそれは、黒守家の秘法と言っても過言ではない。

 だからこそ、魔術刻印の移植はあれほどの死痛を伴ったのだ。





 暗い、昏い部屋。冷たい石造りの地下室。

 陰気、妖気、瘴気。常ならざる気が淀む。
 正常な人間ならば本能的に忌避するであろう異空間。
 そんな魔気に満ちた牢獄で、俺はただ、身を苛む激痛に耐えていた。

 手錠で両手を縛られ、鉄鎖で下半身を固定され、拘束魔術で肉体そのものを封縛されている。
 両肩には杭を打たれ、両脚には釘を撃ち込まれ、何をしようがどう足掻こうが逃れられない状態に状況。

「ぅぁああッ、あ、ぐ、うぅっ……う、げぇ…………!!」

 叫びと共に胃の内容物を、もはや殆ど血だけのそれを吐き散らす。

 嘔吐も吐血も、今ので何十度目なのか。

 もはや胃は空っぽで、中には胃液さえも残っていない。
 度重なる嘔吐で腸壁は傷つき、そこから流れ出た血が胃に溜まっていく。また溜まった血を吐き出し、その嘔吐でまた傷口が広がって血が流れ出る。

 容赦なく続く魔術刻印の移植。

 目前には父親の遺体。
 その腕から直接霊的手術によって、俺の身体に刻印を移植し彫り込んでいく。

 本当なら父が殺された時点で、魔術協会が遺体を回収しに来たらしい。
 しかし黒守の魔術を護る為に曾祖父さんが直接出向き、執行者と回収部隊、十人余りの魔術師との死闘の末に父の遺体を持ち帰ることに成功した。
 その代償は決して安くはなく、曾祖父さんはその時の傷と呪詛によって、余命幾許かの時間をさらに削られ、逃れられない死という運命を与えられた。





 いつまでも続く痛獄の連鎖、
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