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Fate/stay night -the last fencer-
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よ、綾子」
「そうらしいね。どなたー?」
返事を聞き、返事をする。
「どぉもー。剣道部の黒守ですー」
何の気なしに、気さくに声をかけながら戸を開く。
こんなやり取りで弓道場に来ることも珍しくないため、返事をしながら素で扉を開けてしまった。
(いや待て。今、不吉な不吉な遠坂凛の声が聞こえなかったかね?)
自己に問いかける逡巡も今となっては遅し、すでに戸は開いてしまった。
そこにはやはり、この弓道場を預かる主将、美綴綾子と────
「………………」
学園で知らぬ者なきアイドル、遠坂凛が居た。
さて、これは予想外だ。
余人からすれば些細なことかもしれないが、俺にとって美綴一人だけがいる弓道場と、他に人がいる弓道場では心構えの仕方が違う。
さらに言うならば、そこに居た遠坂凛は黒守黎慈にとって鬼門ともいえる少女。
苦手な人物であるとか、嫌いな人物であるとか、そういった話ではない。
直接口に出すことはできないが、俺にとっては過度の接触が危ぶまれる相手なのである。
「何立ち呆けてるのさ。わざわざ来たんなら入りなよ、クロ」
「え……あ、おう」
美綴に招かれるままに足を踏み入れる。
ちなみにクロというのは、一部の人間が使う俺の愛称だったりする。
部活の同部員だったり、中学からの同級生だったり、特に親しい友人だったり。
猫か何かの名前みたいだが、親愛を持ってそう呼ぶのなら俺自身に訂正する気はなかった。
そしてこちらの戸惑いも余所に、凛は茶を啜っている。
俺の忌避の意識は別段彼女のせいというわけではないため、向こうがこちらを意識することはない。
彼女がではなく、こちらが勝手に避けるようにしているだけというか。
備えてある机に対面するように二人は座っていたので、自分も間に入るように座る。
「で、どうしたの。アンタがこっちに来るなんて」
「剣道場は誰も来る気配なかったんで、こっちなら美綴いやがるかなー、とか思って来てみた」
「そう。で、私はここにいやがったけど、何か用事でもあるの?」
「何か楽しそうにお喋りしてるっぽかったんで、暇な俺も混ぜてもらえれば僥倖ですーみたいな?」
「……待て。クロ、あんたさっきの話聞いてたの?」
「どの話?」
「いやほら、だからさ……」
「ああ、美綴が遠坂よりも三キロほどデブいって…………」
瞬間、突風と共に眼前数センチの場所に美綴の拳があった。
座った状態からそこまでの速さで拳を繰り出せるのはお見事。
だが如何せん、寸止めでなかったならその一撃で俺の鼻は折れている。
さすがにそれはご勘弁願いたい。
「口には気をつけな、クロ……次は命がないよ?」
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