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Fate/stay night -the last fencer-
序章
プロローグ
PrologueT
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別に。そんなにホイホイと貸しを作るわけにもいかないわ。それにこれは、選ばれた私自身が解決しなきゃいけないことだもの」
「? それならいいんだが……」
「貴方もね。他の魔術師に簡単に協力するようなことは控えなさい。十中八九、ロクなことにはならないんだから」

 俺だって魔術師なんてものは、原則として信用しないことにしている。
 たとえどれだけ善人である者でも、自分にとって好ましい人格者であってもだ。

 自らも魔術師でありながら、勝手な話ではある。

 今の俺は人間としての生活と魔術師としての在り方を両立させて、自分なりに生きていきたいと思っている。
 一人の人間として、独りの魔術師として全てを与えてくれた曾祖父さんには申し訳ないが、今の俺はそんな中途半端な存在だった。

 魔術師としては他者を信用しない。
 そう言いながらも、凛に対しては昔からの付き合いと個人的な感情から信用してしまっているのだ。

 そんな奴、中途半端以外の何物でもないだろう。

「いいんじゃねえの、一人くらい例外がいても。俺はお前を気に入ってるし、人としても魔術師としても信用してるしな」
「…………そう。構わないけれど、私は貴方とは違うわ。ええ、その時が来たなら存分に利用してあげる」

 一瞬だけ目を見開いて俺を見た後、先程までの空気を一変させ、いつもの態度に戻る凛。
 俺の言葉の何が琴線に触れたのかは分からないが、どうやら彼女には何かしらの意味を含んだようだ。

 最後の一欠けらのサンドイッチを飲み下し、彼女は俺を残して屋上を跡にする。

「魔術師……か…………」

 かくいう俺は久しぶりに自分自身が魔術師であると意識したせいか、気分が高揚していた。
 恐らく──────彼女を出て行った扉を見つめる俺の顔は、無意識のうちに笑みに変わっていただろう。
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