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Fate/stay night -the last fencer-
序章
プロローグ
PrologueT
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 時刻は午前六時半。季節は冬の真っ只中。
 誰も彼もがまだ家の中で、毛布に包まっている時間帯。

 朝の喧噪さえ始まっていない時間に、俺は家を出る。

 見た目そこまで立派とは言えない──むしろ大家には悪いがボロアパートの──二階の一室。

 その開閉だけで軋みを上げる扉を、遠慮なしに開ける。

「ひゃ〜寒ぃッ。いくら冬だからっつっても、今日は一段と寒いな」

 穂群原の学生服に身を包み、通学用鞄を右に抱えてアパートの階段を下りる。

 この時間ではご近所様は、まだ朝餉の時間ですらないだろう。
 人の気配も疎らで朝食を作っている音もしなければ匂いもない。
 8割は眠っていて、1割は早朝出勤、残り1割がようやくお目覚めといったところ。

「毎日朝練に出向いてる時点で、俺って結構真面目だよな」

 何故こんな早朝に起き出してまで学園へ向かうのか。

 それは先の言葉通り、部活の早朝練習があるためだ。
 自他共に認める無頼漢を地で行く奔放な性格だが、日課になってしまっているのだから仕方ない。

「さぁて、今日は何人が出て来てくれるのやら」

 一応俺は剣道部に所属し、現在の主将・副主将ですら歯が立たないほどの腕前である。

 先輩である三年生の元主将ですら、試合で相対してはおよそ負けることはない。
 全国大会にでも出れば表彰台にも上れるのではないか、とも言われているが、自分にも事情があり大会参加だけは辞退していた。

 正確に言うならば、早朝練習には出るが、放課後の部活動には週一程度でしか参加していない。

 午後にはアルバイトをしており、それは学費や生活費の為に自分とっては外せない用事である。
 さすがに中学までは雇ってくれるところがないこともあって、曾祖父の財産を削って生活していた。

 というより、曾祖父の財産を使えばアルバイトをする必要もないのだが、それは俺自身の考えから却下だ。
 俺に遺してくれたモノを消費しながら生きると言うことは、親の脛を齧っているのと変わらない。
 やむを得ないときもあるだろうが、日常生活で掛かる費用は最低限自分で面倒を見なくては、自立した生活をしているとは言えないだろう。

「くあぁ…………あ゛ー、眠ぃ」

 多少は無理をしてでも、収入が多くなるようにスケジュールを組んでいる。
 一般的な家庭に属する人間と比べれば、近年稀に見る苦学生であるだろう。

 普段は一般的な人間に見せているので、そんな私事な事実を知る者は存在しないのだが。

「学校が近いのは利点だけど……あのアパートに備え付けのベッド、寝心地悪ぃったらないぜ。そろそろ自前での購入も検討しようか…………」

 軋む身体を捻り、軽いストレッチをしながら通学する。
 まぁ色々と
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