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故郷は青き星
第十五話
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組員全員の視線が集まった窓の向こうでは、すぐ傍にまで接近した物体の外壁の一部が開いて内部構造を見せていた。
 格納庫のようなシンプルな空間の奥から、ウルスラグナにも設置されているロボットアームを巨大にしたような機械が、蛇が鎌首をもたげるようにこちらに向かってきた。
 船内に乗組員達の悲鳴が響き渡るが、泣こうが喚こうが関係なくロボットアームはウルスラグナの船体をロボットハンドで掴み取ると、そのまま中へと引き込んでしまう。
 ちなみに一番可愛い悲鳴を上げたのは船長だった。



 結局、宇宙船ウルスラグナとは事故により接触したと言う報告を連盟に伝えると決めた。
 エルシャンとしても、こんな馬鹿な理由で処分を受けるのは不本意だった。築き上げたフルントの名誉も失いかねない。
 隠蔽するのにマザーブレインも反対しないどころか、情報の捏造に進んで協力した。
『私の主はあくまでも司令官ですから』
 エルシャンは心の底から信用出来ないと思った。
「それにしても2029年か……」
 航宙母艦内に格納したウルスラグナ船内をスキャンした結果。想像していた数字を見つけた



「しかし重力があるとは、ここが宇宙船の内部だとして、一体どんな技術を使えば重力を生み出せるというんだ?」
 そう言いながら、ケネスはチラッと他の乗組員を振り返るが誰も視線を合わせない。
「そうだクリスタル怪我はどうかね?」
 威厳たっぷりにケネスが尋ねるが、クリスタル女医は顔を背けて方を震わせる。
「どうかね?」
 もう一度声に力を込めて尋ねる。
「わ、笑うと痛いわ……イタタッた」
 笑いながら背中を丸めて痛む足を押さえる。
 周囲からもクスクスと押し殺した笑いがこぼれる。
「……キャーは無いわ。ヒゲなのに」
 ケネスが鋭く声の主を振り返って睨むが、ロバートはついッと視線を逸らすと口笛を吹く。
「悲鳴が可愛かったらヒゲが台無しだろう」
「そうだなヒゲは立派なのにな……」
 一方でトールとウォルターのコンビは容赦無い言葉をケネスの背中に投げかける。
「何だよ! ヒゲで悲鳴が可愛かったら駄目なのかよ!」
 肩を震わせながら立上がって叫ぶ船長の後ろで、ジョイスが「船長可愛い」と小さく呟いていた。

 内部に引き込まれて1時間が経過した。入り口は既に閉ざされている。
 ウルスラグナの電気系統の修理は完了したが地球との通信は復帰しなかった。
「それでこれからどうします船長?」
 いい加減にしびれを切らしたロバートがケネスを促す。どのみちこのままでは事態が好転する事は無い。
「そ、そうだな。私と……ウォルターが宇宙服を着て船外に出てみる」
 ウォルターははっきりと嫌な顔をしながら頷いた。

「船長。重力があると宇宙服を着るのも楽じゃないです
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