第四話 自分達だけ名探偵その四
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二人が憤っている理由は一つ、それは自分達の推理が外れたことであった。
「そういうことなんだ、これは」
まずはテンボが言った。
「俺の推理が外れるなんて」
「あたしの洞察力に狂いが!?まさか」
「こいつ等本気で言ってるのかよ」
「そうみたいね」
ベンとアンネットがそれを見て囁き合っている。
「そんなことはありえない!」
サルエスラ『酒場の女』の有名なアリアの題名そのままのことを言う。
「俺の灰色の脳細胞に狂いはないんだ!」
「そうよ、あたしだって」
「これは何かの間違いだ!」
テンボは意地でもそれを認めない。
「これは何かの」
「そうよ、こんなこと。どうして」
「どうしたもんかね、こいつ等」
「さあ?放っておいてもいいんじゃないかしら」
「放ってって」
アンネットの突き放した言葉に眉を顰めさせるベン。
「危険だぜ、こいつ等」
「死んでも治りそうにないんだから仕方ないじゃない。それに傍目で見てたら面白い」
「そういうことなんだな?」
「そういうこと。とりあえず日直の仕事しましょう」
「そうだな。そうそう」
「何?」
ベンは思い出したようにアンネットに言った。
「ルシエンが御前のこと探してたぜ、校門でさ」
「また?」
アンネットはそれを聞いてくすりと笑った。
「アンネットは何処だって」
「教室でいつも会えるのに」
「顔見せてやったらどうだ?多分今でも校門で会ってるぜ」
「それで何で会わなかったのかしら」
「多分御前が日直で早いの知らなかったんじゃねえかな」
「いつも声かけるのにそこんところは抜けてるんだから」
しょうがないわね、と言いたげな顔であった。何処かお姉さんめいている。
「まあ日直の方は俺がしとくからさ」
「頼めるの?」
「ああ。早く行って来いよ」
「そうね、それじゃあ」
こうしてアンネットは校門へ、ベンは職員室へ向かう。その間も例の二人は騒いでいた。
「俺は天才だ!俺の手によって連合の推理は生まれ変わる!」
「現代のハニー=イーストのあたしが!」
「もしかしてあいつ」
ダンがジャッキーが騒いでいるのを見て呟く。
「ハニー=ウェストって言いたいのか?」
その突っ込みはジャッキーの耳には入らなかった。とりあえず二人のお騒がせ探偵は今回もまた何の役にも立たなかったのであった。そして役に立つ日は来そうにもなかった。
自分達だけ名探偵 完
2006・9・12
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