暁 〜小説投稿サイト〜
戦国御伽草子
壱ノ巻
青の炎

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なら、俺はおまえを殺すぞ」



「!」



俺がそう言った途端、瑠螺蔚の懐剣が弾き飛ばされた。



はっと俺は近くの茂みを見た。若だ!若が弓を射て、正確に瑠螺蔚の手もとの懐剣を弾き飛ばしたのだ!



瑠螺蔚が痺れているだろう手を押さえて、一歩俺から下がった。



俺はその一歩分、進んで距離を縮めた。



瑠螺蔚に、何も考えずに手を伸ばした。



瑠螺蔚は俺の手を見て、唇を噛んだ。それから、身を翻す。



その足の先には、川。



「!」



瑠螺蔚が一瞬、俺を見た。



そして笑う。



そのまま躊躇いもせず、瑠螺蔚は川に飛び込んだ。



「っ、瑠螺蔚ーーーーーーっ!!!」



必死で伸ばした手は、(あえ)無く空を切った。



川に落ちた瑠螺蔚の、その衣がゆらりと揺れて、すぐに流されて見えなくなった。



今なら、まだ間に合う!



俺は上衣を脱いで、川に飛び込もうとしたが、すぐに止めてしまった。



俺は何をしようとしている?これでいいのだ。



俺は、何を考えているのだ。



不意に肩に手が置かれたが、俺は振り向けなかった。ただ、瑠螺蔚の消えた川面を見つめていた。



「やったな発六郎。だが、3人だな。あと、男が二人かー・・。・・・おい?どうした?真っ青だぞ。発六郎?」



何も考えられない。俺を覗き込む若の顔さえ、わからない。



瞼裏に、瑠螺蔚の姿が浮かび上がる。



ありがとうと言った笑顔は消え失せ、瞳に青い炎を燈して、俺を静かに見ている瑠螺蔚。



焼きついて離れないその姿。



「あぁ…」



俺は呻いた。



「おい、どうしたんだよ。結構な騒ぎになってきた。このまま屋敷に戻ろう。三人殺したんだ。あとの二人はまた、ゆっくりと考えるさ」



三人、殺した…。



そうだ、俺が殺したんだ。瑠螺蔚を…。



俺は、顔を両手に埋めた。
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