壱ノ巻
青の炎
2
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なら、俺はおまえを殺すぞ」
「!」
俺がそう言った途端、瑠螺蔚の懐剣が弾き飛ばされた。
はっと俺は近くの茂みを見た。若だ!若が弓を射て、正確に瑠螺蔚の手もとの懐剣を弾き飛ばしたのだ!
瑠螺蔚が痺れているだろう手を押さえて、一歩俺から下がった。
俺はその一歩分、進んで距離を縮めた。
瑠螺蔚に、何も考えずに手を伸ばした。
瑠螺蔚は俺の手を見て、唇を噛んだ。それから、身を翻す。
その足の先には、川。
「!」
瑠螺蔚が一瞬、俺を見た。
そして笑う。
そのまま躊躇いもせず、瑠螺蔚は川に飛び込んだ。
「っ、瑠螺蔚ーーーーーーっ!!!」
必死で伸ばした手は、敢無く空を切った。
川に落ちた瑠螺蔚の、その衣がゆらりと揺れて、すぐに流されて見えなくなった。
今なら、まだ間に合う!
俺は上衣を脱いで、川に飛び込もうとしたが、すぐに止めてしまった。
俺は何をしようとしている?これでいいのだ。
俺は、何を考えているのだ。
不意に肩に手が置かれたが、俺は振り向けなかった。ただ、瑠螺蔚の消えた川面を見つめていた。
「やったな発六郎。だが、3人だな。あと、男が二人かー・・。・・・おい?どうした?真っ青だぞ。発六郎?」
何も考えられない。俺を覗き込む若の顔さえ、わからない。
瞼裏に、瑠螺蔚の姿が浮かび上がる。
ありがとうと言った笑顔は消え失せ、瞳に青い炎を燈して、俺を静かに見ている瑠螺蔚。
焼きついて離れないその姿。
「あぁ…」
俺は呻いた。
「おい、どうしたんだよ。結構な騒ぎになってきた。このまま屋敷に戻ろう。三人殺したんだ。あとの二人はまた、ゆっくりと考えるさ」
三人、殺した…。
そうだ、俺が殺したんだ。瑠螺蔚を…。
俺は、顔を両手に埋めた。
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