九話
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思い返せば手加減されていたと分かる。何せ茶々丸さんの攻撃手段はデコピンだったのだから。
「勝てないかも……」
普段の自分からは考えられないほどよわよわしい声が漏れた。それほどまでに、追い詰められている。さすがに、こんな状況で前向きになれるほど、じぶんは図太くなかったようだ。そう思うと、自然に固い笑みが浮かんだ。
そんな時、自分の目の前に何かが吹き飛ばされてきた。最初は健二か刹那さんが倒した鬼かと思ったが、どうにも違うようだ。
「……え?」
吹っ飛んできたものは上下に分かれた紅い外套に黒のボディアーマー、そして特徴的な白い髪に褐色の肌。それは間違いなく……
「健二!」
この戦いで自分を何度も助けてくれた、宮内健二だった。
「健二! 健二!」
誰かが俺の名前を読んでいる。誰かは分からないが、少し静かにしてほしい。今の体にはその声すらも鈍い痛みとなって体に響く。
「健二! 大丈夫なの!? 何とかいいなさいよ!」
少しずつ頭がはっきりしてくる。それに伴い、ぼやけていた視界も鮮明さを取り戻した。
「明日、菜……か。大丈夫か?」
「え? うん、ネギの魔力が守ってくれてるから……って、それはこっちのセリフよ! 大丈夫なの!?」
心配してくれていることに嬉しさと申し訳なさを覚える。明日菜を補助しようと思っていたのに、このザマだ。体中が悲鳴を上げている。正直、しばらく休まなければ接近戦は厳しいだろう。弓に関しても同じだ。一本一本射るならともかく、速射には耐えられない。
「詰み、か」
打てる手がない。最早俺は足手まといになるだけだ。身体強化だけに費やしていたこの世界の魔力も、もうすぐ尽きる。……だが、それでも、譲れないものがある。
「……る、から」
「え?」
この少女を……俺を心配そうな目で見ながら支えてくれる少女を、俺は……
「明日菜は、俺が……守るから!」
守らないといけない!!
「……あ」
残された力を総動員して立ち上がる。そして、己が両足で立ち上がった時、俺の頭の中で一つの映像が流れた。
――「剣を収めたということは、戦いをやめる気になったのですね?」
――「馬鹿を言え、私はアーチャーだぞ? 元より剣で戦う者ではない」
UBWルートにおいて、アーチャーが裏切った時のワンシーンだ。何故この映像が流れたかは分からない。だが、俺はこのシーンのあるセリフに、活路を見出した。
――元より”剣で戦う”者ではない。
そうだ、アーチャーは剣で戦う者ではない。アーチャーは数多の手札から最適なものを選択して戦うのだ。剣はあくまでも、その中の一つにすぎない。そして、それは俺にもあてはまる部分がある。なぜなら、その数
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