第26話
[1/7]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
八月二八日、天気超晴れ。
おにいちゃーん、という女の子ミルキーボイスで高校生・上条当麻は目が覚めた。
「何だ、今のトリハダボイス?」
上条は半分寝ぼけたまま、うっすらと目を開けた。
女の子の声はドアの向こうから聞こえたみたいだった。
横倒しの視界に映るのは六畳一間の和室。
床はボロボロの畳張りで、天井には古めかしい四角い電灯カバーのついた蛍光灯、油っぽい汚れのついた押し入れの襖に家のトイレにでも使われていそうな簡単なカギのついた木のドア、エアコンの代わりの扇風機はプラスチックのボディが黄色く変色していて、ちょっと鼻を動かすと潮の香りがした。
此処は学生寮の一室ではなく学園都市の中ですらない。
一般世界・神奈川県某海岸、海の家「わだつみ」の二階にある客室なのだ。
別の部屋にはそれぞれ上条の両親やインデックス、そして麻生恭介もいるはずだ。
「そっかー「外」来てたんだっけか。」
上条の住んでいる超能力開発機関「学園都市」は東京西部に存在する。
学園都市では機密保持と各種工作員による生徒の拉致の危険性などを考慮して、極力学生を街の外へ出す事を好まない。
許可をもらうには三枚の申請書にサインをして、血液中に極小の機械を注入し、さらに保証人まで用意しなくてはならないのだが今回のケースは異例だった。
だが、上条と麻生は一週間ほど前に、学園都市で最強の超能力者を倒した。
正確には上条があと一歩のところまで追い詰めたのだが、思わぬ奇襲を受けてしまって絶体絶命のピンチまで追い詰められた。
その後にやってきた麻生が倒したというのが正しいのだが、上層部は麻生と上条の二人で協力して倒したのだと思っている。
その情報は夏休みで生徒間の交流の少ない中あっという間に広まり、上条と麻生の地位が飛躍的に向上したかというとそうではない。
逆にあの二人の無能力者を倒せば学園都市の最強の称号が誰でももらえるんだという意見の元、腕に覚えのある不良さん達が大々的な人間狩りを始めてしまった。
この騒ぎに頭を抱えたのは学園都市の偉い人だ。
騒ぎが治まるまでどこかに行っていろ、と言われ今の状況に至る。
麻生は四六時中狙われていても何の問題はないと上に言ったが、そっちが困らなくてもこっちが困るからどこかに行ってろ、と言われ麻生も渋々従った。
(けど、行き先には明らかに悪意が感じられんだよな。)
今年は太平洋沿岸で巨大クラゲが大発生したおかげで、猛暑にも拘らず海の客足はゼロに等しかった。
さらに外出には保証人の動向が義務付けられているがその保証人は親である。
何が哀しくてこの歳で両親と海辺ではしゃがなくてはならないのかと上条の気分は既に下がりつつある。
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ