第二部
第一章 〜暗雲〜
九十一 〜新たなる智〜
[6/7]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
い、まるで朱里とは実の姉妹のようだな。
「土方様。実はお呼びだてしたもう一つの目的が、この娘なんです」
「鳳統殿が?」
「はい。才能は愛里や朱里にも引けは取りません。……ただ、御覧の通り極度の引っ込み思案でして」
「それは、朱里も似たようなところがありますな」
「ええ。ただ、朱里ちゃんはそれでも思い切って世に出て行ったんです。……でも、この娘は未だに此処にいます」
そう言って、司馬徽は鳳統の頭を撫でる。
「ですが、このまま埋もれていい才能ではありません。それに、この娘の事は蔡瑁殿も当然知っています」
「……なるほど」
「武力を以て仕官を強要されれば、私にもこの娘にも、それを拒む術はありません。そうなれば、この娘の天賦の才が、悪事に用いられる事になってしまいます」
鳳統の実力の程はわからぬが、恐らく経験は皆無。
その上世に出る事を躊躇うのであれば、才能は抜群でも視野は恐らく広くはなかろう。
その状態で蔡瑁にいいように使われれば……少なからぬ人間がその為に苦しむ事になるであろうな。
「土方様。どうか、この娘をお連れ下さい。そして、朱里のように育てて欲しいのです」
「司馬徽殿。朱里のように、と仰せだが……朱里は元々才のある身。経験を積ますように指示をしたのは確かでござるが、今の朱里は自身で作り上げたものにござるぞ」
「そうかも知れません。ですが、その為には環境が必要です」
「……それが、拙者の許と?」
「そうです」
「ふむ。鳳統殿」
「は、ひゃい!」
「貴殿は如何なのでござるか? 拙者は氏素性すら知れぬ者、しかも朝廷からも危険視されている身にござる」
と、鳳統は表情を改めた。
「そ、そうかも知れません。ですが、土方様が怪しげな、そして危険な御方だったら。朱里ちゃんや愛里ちゃんが今までお仕えしている筈がありません」
私は黙って、鳳統の言葉を聞く事にした。
「それに、土方様が冀州や交州でなさった事、いろいろと調べました。……庶人の為に、そしてご自身の信念の為に、常に毅然と臨んでおられると思いました」
「…………」
「で、ですから……。わ、私もどうか、お役立て下さい!」
「歳三様。私からもお願いします」
「土方様。水鏡先生が仰せの通り、このままここに残しておくべきではありません。私からもお願いします。
紫苑と伊籍が、揃って頭を下げた。
……断る理由がないどころか、万が一断れば私も皆も生涯悔やむ事になるな。
「頭を上げられよ。……司馬徽殿」
「はい」
「貴殿自慢の鳳統殿、確かにお預かり致しますぞ」
私がそう言うと、一同が安堵の溜息を漏らした。
「鳳統殿……いや、鳳統」
「は、ひゃい!」
「私とて、至らぬ処は多々ある。だが、お前の期待に背かぬよう努力する事は誓おう」
「……わかりま
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ