第二部
第一章 〜暗雲〜
九十一 〜新たなる智〜
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いのです」
「しかし、それでは劉表殿も黄祖殿も、雪蓮や蓮華らから生涯恨まれますぞ?」
「……それは覚悟の上との事です。無論、我が主も」
劉表も、苦渋の決断だったのであろう。
伊籍の顔にも、何処か諦めの色が見える。
「では伊籍殿。蔡和の扱いだが、どうなされる?」
「その事ですが……襄陽までお越し頂いたとしても、入城が認められる事も、蔡瑁が土方様にお会いになる事もありますまい」
「では、どうせよと仰せか?」
「その事ですが。朝廷に訴え出て頂くしかないかと存じます」
「……伊籍殿。陛下ご自身はさておき、その取り巻きと拙者の関係……ご存じでござるな?」
「承知しています。ですが、非を訴える場はそれ以外にありませぬ。……荊州には、最早自浄を期待するだけ無駄ですから」
「しかし、それでは劉表殿の面目は丸つぶれでござるぞ」
「主は、自分の名誉や面目などどうでも良い、と申しております。それよりも、土方様の義を貫いていただきたいと」
私の義を貫け、か。
劉表が全て覚悟を決めているという事であれば、もう私から何も申すまい。
「委細承知、と劉表殿にお伝え願いたい」
「……はい。必ずや」
「紫苑」
「はい」
「馬良殿と馬謖殿の事、気がかりであろうが……。今の我らには手出しが出来ぬ」
「……わかっています。無事である事がわかっただけでも、まだ救われた気がします」
「お二人を誅する事は、いくら蔡瑁でも無理です。馬氏は蔡氏よりも広く名を知られた名士、その一族に連なる者を無法にも手にかけたとなれば、蔡瑁と言えども誹りは免れませんから」
伊籍の言葉に、紫苑も弱々しい笑みを浮かべた。
「あ、あの……。お茶をお持ちしましゅた……あう」
戸口から声がかかる。
……何処かで聞いたような喋り方だが。
「あら、ご苦労様。悪いけど、入ってきてくれる?」
「あ、ひゃい!」
盆を手に、少女がおずおずと入ってきた。
奇妙な形の帽子を目深に被り、背格好は朱里と良く似ている。
「あ、あの……。ど、どうぞ」
恐る恐る、といった風情で、少女は卓上に茶碗を置いていく。
「ありがとう。貴女も自己紹介なさい」
「わ、わかりましゅた……うう」
うむ、噛みまくりなところといい、朱里そっくりだな。
「は、初めまして。私は姓を鳳、名を統、字を士元と言いましゅ。……あう」
鳳統だと?
……まさか、あの鳳統か?
「司馬徽殿。貴殿の私塾には、朱里と並ぶ俊英がいると聞き及んでおりまする」
「ふふ、やはり土方様はご存じですか。そうです、この娘は鳳雛とも称されています」
そうか、こんなところにいたとはな。
朱里からは何も聞かされていなかったが、諸葛亮がいるのであれば鳳統がいてもおかしくはない。
……しかし、雰囲気といい口調とい
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