第二部
第一章 〜暗雲〜
九十一 〜新たなる智〜
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ずかしい話ですが、主劉表が病に伏せてよりずっとその有様なのです」
「ふむ。だが、解せぬ事がある」
伊籍は頷いて、
「何故、土方様と孫堅様を陥れるような真似をしたか……という事ですね」
「然様」
「蔡瑁は、主亡き後、次男の劉j様を後継者として擁立するつもりでいます。長男に劉g様がおいでになるにも関わらず、です」
「しかし、それは謂わば荊州内部のお家騒動に過ぎませぬな」
「その通りです。ですが、その際に隣州からの介入があったとなれば話は変わってきます。少なくとも、我が荊州にはそこまでの軍事力はありませんから」
私や睡蓮が武力を背景に、お家騒動に首を突っ込む事を懸念したという事か。
被害妄想にも程があるな。
確かに私も睡蓮も、義に叛く真似は嫌うが……それを旗印に、内紛に口を挟むなど愚の骨頂。
「それで、賊の反乱と見せかけて我が軍と睡蓮軍を誘き寄せた。そう仰るか」
「……私も、馬鹿馬鹿しいと一蹴したくなる話です。ですが、これは事実です」
「土方様。劉表様は無論、このような企てを知り、止めようとなさったそうです。ですが、折悪く容態が急変してしまい、回復した時にはもはや手遅れになっていたようです」
司馬徽はそう言って、頭を振った。
「伊籍殿、今一つお聞かせ願いたい。此度の事、馬氏は関与しているでござるか?」
「いえ。馬良と馬謖の事を仰せかと思いますが、二人は関与していません。いえ、関与させられそうになりましたが、真相を知って協力を拒みました」
「雅ちゃん。じゃあ、今あの二人は?」
「……襄陽城内の一角に、幽閉されています。何者も近付けないので、私も様子はわかりません」
「そう……」
ふう、と紫苑は息を吐く。
やはり、心配なのであろうな。
「主は出来るならば直接お目にかかってお詫びしたいとの意向です。ですが、蔡瑁がそれを許さないでしょう」
「拙者への謝罪ならば無用でござる。……だが、呉にいる睡蓮の遺児や麾下の者らはそうも行かぬでしょうな」
「そう思います。ですが、いくら言葉を尽くしても孫堅様を生き返らせる事は出来ない以上……お許しをいただくのは無理でしょうね」
「せめて、睡蓮を討ち取ったという呂公なる者を、呉に引き渡しては如何かと存ずるが」
だが、伊籍は静かに頭を振る。
「私もそうすべきだと思います。ですが、江夏太守の黄祖が、それを頑として拒んでいます。旧知の間柄だから、引き渡すのは忍びないと」
情で我を張る、だがそのような真似が許されると思っているのであろうか。
「黄祖は荊州南部の守りの要です。州牧の権限でその職務を解く事は出来ますが、その代わりとなる人物がいないのが実情なのです」
「……なるほど」
「然りとて、今の朝廷から黄祖に代わる人物が派遣される見込みはありますまい。黙認するより他にな
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