第二部
第一章 〜暗雲〜
九十一 〜新たなる智〜
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ような御方が何故此処まで功名を上げておられるのですか? それに、一騎当千の将も集っていますわ。無論、紫苑も含めて」
「偶さかの事にござろう。全ては皆の尽力によるもの、拙者の功など微々たるものにござる」
「噂通り、謙虚な御方のようですわね。愛里や朱里が仕えるべき御方と見込んだだけの事はありますわ」
どうもこの国の者は、皆この調子らしいな。
私は常に一歩引く生き方をしてきた、それを今更改めるつもりもない。
それが、美徳と取られるか……おかしなものだ。
「どうぞ、此方です」
そして、奥まった一室に案内された。
どうやら、先客が居るようだな。
……またもや、女子か。
「雅さん、お待たせしました」
「いえ」
そう言って、女子は私に対して礼を取る。
「初めてお目にかかります。私は伊籍と申します」
伊籍?
確か、劉表の臣で後に劉備に仕えたという人物だな。
この世界でも、同じく劉表の下にいるのであろうか?
「ご丁寧に痛み入る。拙者、土方と申す」
「はっ」
「とにかくおかけ下さい。お話はそれからで」
勧められるままに、私は席に着く。
「では、まず改めてお礼を。土方様、ご多忙の折お運びいただけた事、そして愛里と朱里を大切にしていただいている事。この通り、お礼を申し上げます」
頭を下げる司馬徽。
「いや、礼を申すのは拙者の方にござろう。二人がいなくば、今の拙者はござらぬ」
「いえ、土方様もご承知の通り、あの二人はどんなに黄金を積まれても、認めた相手にしか仕える事はありません。何と言っても、私の生徒の中でも群を抜いた存在ですから」
「……では、礼はお受け致す」
このまま押し問答を続けていても利はない。
それに、司馬徽が礼を述べたいという気持ち、無にする訳にはいかぬからな。
「ありがとうございます。……本日来ていただいたのは、それだけではありません」
「そこにおられる伊籍殿……でござるな?」
「はい。では、雅さん」
司馬徽は伊籍の事を真名で呼んでいる。
つまり、二人はそれだけの関係という事か。
「土方様。我が主人、劉表よりの書簡です。どうか、お受け取りを」
「劉表殿から、か。では、頂戴仕る」
伊籍が差し出したのは、竹簡ではなく紙片。
それも、こよったような形跡が見られる。
「ふむ。密書とお見受け致すが」
「その通りです」
私は頷き、紙片に目を落とす。
筆跡が乱れているが、読めぬ事はない。
「今、我が主人は病の床に臥せっております。筆が乱れて申し訳ない、と主人の言伝にございます」
「わかり申した。……伊籍殿、少々伺っても宜しいか?」
「はい」
「まず、此度の事……劉表殿ではなく、蔡瑁殿の独断と記されてござるな」
「仰せの通りです。お恥
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