第七話 幼児期F
[1/6]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
春一番。おやつの桜餅をアリシアと食べながら、ぐだぐだしています。服装も長袖から半袖に代わり、暖かくなってきたなーと思う。
しかしなんだろう、この胸に渦巻く衝動感。春空を見ているとなんかうずうずしてきた。なので、俺は自分の心に感じたことを素直に口に出してみることにした。
「そうだ、風を感じよう」
「かふぇ?」
『ますたーが、また突拍子のない変なことを言い出した』
コーラルがすごく失礼だ。妹は口いっぱいにお餅を詰めながら聞き返してきた。ちゃんと食べてからにしようね。
それにしても、そこまで変なこと言った覚えはないぞ。春ってぽかぽかしていて、季節的に最高なんだぜ。というか放浪するのにうってつけだ。新しい季節って感じがして新鮮さに溢れているしな。
そんな陽だまりの中を、爽やかな風を受けながら身体いっぱいに感じる。あまい花の香りと青々とした草木の豊かさ、新しい命の芽吹き…。やばい、絶対にいい!
「やっぱり変じゃないだろ。合理的な考えに基づいた正当な理論だ」
『ますたーが……合理的な考え…?』
「おい、待て。なんでそこを疑問に思うんだ」
俺ってちゃんと考えてから行動にうつすタイプだと思うぞ。まぁ、直感やノリで動くこともあるっちゃあるが。俺そんなにもはちゃめちゃな性格なのか?
『ますたーの場合、思考している途中でおかしな化学変化を起こしますからねー』
「お前、マスターに容赦ねぇな…」
『それほどでも』
ほめてない。
「お兄ちゃん、風って楽しいの?」
「ん? あぁ、楽しいというより、気持ちがいいものかな」
「ふぇー」
桜餅を食べ終わった妹から質問があったので答えてみた。ふむ、どうやら妹は風の良さを知らないらしい。それはもったいないことだ。これは兄として妹の世界を広げてあげるべきだろう。
俺も前世ではよく、風を感じるために無意味に自転車を乗り回したものだ。河川敷にあるサイクリングロードを当てもなく走り続けたことや、唐突に自分の大学まで行ってみようと、県一つ越えて片道7時間を走ってしまったこともある。往復約14時間弱。頑張った。
武勇伝として友人と家族に話したら、「絶対にお前はバイクの免許だけは取るな!」と社会人になってからも口酸っぱく言われるようになった。くっ、ちょっと楽しみにしていたのに…。今世では乗れるのだろうか?
「いいか、アリシア。風を感じるのはすごいことなんだぞ」
「そうなの?」
「もちろん。それに、とある世界にはこんなことわざまであるんだ」
「ことわざ?」
「あぁ。獅子の子落とし、または獅子は我が子を千尋の谷に突き落とすと言ってな。つまり、風感じてこいやァ! と我が子を元気よく落として、風の良さをその身で感じようという
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ