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八条学園騒動記
第二十五話 手綱は誰の手にその四
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。答えるかわりに表情が強張っている。
「じゃあまあそれを食べ終えてくれ」
「そうしたら助かるそうだ」
「そうです」
 ベッキーは平気な顔で同じカレーを食べながら言ってきた。
「けれど思ったより辛くないですね」
「それでかよ」
「一体どうなってるんだ」
「じゃあよ」
 やっと一口食べ終えたルシエンが言ってきた。
「食べるぜ。それでいいんだな」
「そうらしいからよ」
「まあ頑張ってくれ」
「わかった」
 彼は力なくそれに答えた。そのうえでまたスプーンを動かす。
「じゃあまた」
 カレは食べはじめた。顔どころか身体中から汗を噴き出しながら。舌は麻痺し燃え上がっている。その中でただひたすら食べ続けている。
「御馳走様」
 ベッキーはもう食べ終えていた。早い、あまりにも早かった。   
 だが彼はまだであった。悪戦はまだ続いていた。
 ただひたすら食べ続ける。しかしそれも限界に達しようとしていた。
 スプーンの動きが止まった。皆それを見て終わった。
「駄目か」
「限界か」
 皆それを見て思った。既にルシエンは何も見ていない。誰もがそこから彼の限界を悟っていた。
 しかしここで。思わぬ女神が現われた。
「ルシエン」
 アンネットが彼にそっと声をかけてきたのだ。動きを止めている彼に。
「食べ終えたらデートしましょう」
「デート!?」
 ルシエンはその言葉を聞いて声を出した。
「そうよ、デートよ」
 彼女はまたそれを言った。
「そのカレーを食べ終わったらね。いいでしょ?」
「デート・・・・・・」
 ルシエンはまたその言葉を呟いた。
「アンネットとデート」
「そうよ」
 声でにこりと笑ってきた。
「わかったわね。そのカレーを食べ終えたらね」
「ああ」
 彼はそれに応える。今意識が戻ってきていた。
「わかった」
 そして今はっきりと答えた。
「このカレーを食べる」
「そう、食べて」
 アンネットは囁く。
「食べて私とね」
「よし!」
 今彼は完全に目覚めた。
「食べるぞ今、そして」
 スプーンがまた動きはじめた。同時に目の光も戻った。
「アンネットとデートだ!俺はやる!」
「おおっ!」
 皆彼の復活を見て思わず声をあげた。あげずにはいられなかった。
「復活か!」
「しかしアンネットの言葉で簡単に」
「どういうことなんだ、これは」
「だからルシエンだからだよ」
 フックが言う。
「ルシエンだからって!?」
「答えになってないんじゃ、それって」
「いえ、なってるわ」
 それにプリシラが言ってきた。

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