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八条学園騒動記
第二十二話 彰子の秘密その五
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「まあ彰子ちゃんらしいって言えばらしいわね」
 ダイアナはそう言ってにこりと笑う。
「自分では気付かない辺りが」
「けれどさ」
 アンがここで言ってきた。
「相手もわかってると思う?」
 そう他の三人に問う。
「彼が」
「いや、それは」
「ちょっとねえ」
 ジュリアもペリーヌもそれには難しい顔をする。
「そもそもそういう感情があるかどうか」
「ミステリアスっていうの?」
 ペリーヌが考え込みながら言う。
「ああいうのを」
「ううん」
 アンも腕を組んでしきりに考え込んでいた。
「違うかも」
「そうよね」
「また違うわよね、あれは」
 ジュリアとペリーヌはそれに応えて述べる。
「何て言うか」
「やっぱりうちのクラスにいるべくしているっていうかね」
「まあ気付いていないのは確かね」
 ダイアナは笑って言ってきた。その笑みは何処か大人びて達観したものさえあった。
「けれどそれはそれでいいじゃない」
「いいの?」
「こういうのはね、わかっていたら面白くないのよ」
 そう三人に返す。
「アンだってそうでしょ?」
「あれっ、私?」
「ええ、漫画でもさ」
 話を振られてキョトンとするアンに対して言う。
「あらすじ決まっていたら面白くないでしょ」
「ああ、そういうことね」
 アンはそう言われると納得したように頷いてから微笑んだ。
「それはね。読まれたらちょっと悲しいわね」
「それよ。だからこういうことは」
「読めないからこそいいのね」
「そういうこと」
 ダイアナはアンのその言葉を聞いて満足したように頷いた。
「だからね。あの二人も」
「これからが楽しみってわけね」
「ええ」
 今度はペリーヌに答えた。
「けれどさ」
 だがここでジュリアが言った。
「私の勘だけれどさ」
「何!?」
「あの二人中々気付かないわね」
 これは四人にとっては勘でなくとも何となくすぐにわかることであった。
「かなり遅い話になるわよ」
「でしょうね」
 ダイアナがそれに答えてきた。
「けれどそれも恋」
「恋せよ乙女ってことね」
「そう、自分で気付かなくてもね」
 ジュリアに返す言葉は何処か哲学的なものになっていた。
「それが女の子を奇麗にしているのよ」
「成程」
 最後は実に奇麗に決まった。だがその頃相変わらず訳のわからないことに明け暮れている二人がいた。
「よし、わかったぞ!」
 テンボが部室で何か読んで叫んでいた。ドルーリ=レーンの話であった。耳の聞こえない舞台俳優出身の探偵の話である。古典的名作であると言っていい。
「犯人は耳の聞こえない男だ!」
 話は何時の間にか事件ものになっていた。それまでの経緯は他の者にはあまりにも奇想天外過ぎておよそ理解不能なものになって
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