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ソードアート・オンライン ーBind Heartー
食べたい男達
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ハンター・スナイプ≫

紫電のような光の尾を引いて、スローイングダガーは弾丸のように回転しながらまっすぐ梢の陰へと飛び込んだ。
すぐに一際甲高い悲鳴が届きーー表示されていた奴のHPバーがぐい、と動いてゼロになった。ポリゴンが破砕する聞き慣れた硬質な効果音。
今のは中級の投剣用剣技で、とどめの一撃として使用すれば標的のアイテムドロップ率をほんのわずかだが高められるというものだ。
もちろん、それでも確実に手に入るというわけではない。

「トーヤ、確認だ」

「はい!」

俺が指示すると同時に右手を振り、手元を動かしていく。
そのまま似たような動作を繰り返し、やがてこちらを振り向いた。
その右手はすでにメニューパネルの操作から外れ、親指は天に向かって突き上げられていた。

「バッチリです。≪ラグー・ラビットの肉≫、確かにゲットしました!」

俺と出会った時のように瞳を輝かせ、少年剣士は満面の笑みを見せた。
それにつられた訳ではないが、俺の表情も自然と笑みに変わる。
鼻歌まじりにまた右手を動かすトーヤを見てメインメニューを閉じているのかと思ったが、それはどうやら違ったらしい。
突然、俺の眼前に半透明のシステムウインドウが現れた。トレードウインドウだ。
トーヤが右手の指を動かしていくと、ウインドウのトレード欄にアイテム名が表示される。
それは手に入れたばかりの、≪ラグー・ラビットの肉≫だった。

「あげます。最初に見つけたのはキリトさんなんですから、キリトさんの物です」

その言葉に、不覚にも俺はしばしの間絶句してしまう。
トーヤの言っていることはもっともなのだが、こうもあっさりと他人にS級食材を渡してしまう奴はそういない。
というか、初めて見た。

「……いや。それはお前が持ってろよ。お前がドロップしたんだから、もうお前の物だ」

さっきのドロップ率アップスキルのおかげで入手した、という可能性は否めないし、そもそも攻撃の権利を譲ってしまったのは俺の方だ。それに最大の理由としては、ここまで馬鹿正直な行動を取られると、さすがに独り占めしようとしていたことに毒気を抜かれてしまったところにある。
さっきまで疑っていたのが、今ではちょっぴり後ろめたい。
そのトーヤはというと、キョトン顏から少し考えるように自分の唇をなぞる。なんだか子どもっぽいその仕草は、こいつには妙に似合っていた。
やがてその右手でウインドウを閉じたら、俺の視界からもトレードを報告するウインドウが消えた。

「それじゃあ、どうするかはキリトさんが決めてください。食べるにしたって、俺の料理スキルじゃS級食材は扱えないですし」

「お前、料理スキルなんて上げてるのか」

「そこそこってくらいですけど。これでも結構な節約になるんですよ
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