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ソードアート・オンライン ーBind Heartー
食べたい男達
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色いカーソルと対象の名前が表示される。
その名前を見た途端、俺は息を詰めた。
「な、何かいたんですか……?」
ようやく状況を飲み込んだらしいトーヤが、四つん這いになりながら小声で訊ねてくる。その表情はさっきと比べていくばか神妙に見えた。
俺は無言で腕を持ち上げ、件の標的のいる樹の上を指差して示す。
目を細めて俺の指すその一点を睨みつけていたと思ったら、いきなりその目が見開かれた。
「ら、≪ラグー・ラビット≫っ……!? 超レアモンスターじゃないですか……!」
動揺しながらも声を抑えている。こういう所は、今まで生き残ってきただけあるようだ。
あのレアモンスターの実物は俺も初めて見る。その、それほど大きくはない、木の葉にまぎれる灰緑色の毛皮と、体長以上にながく伸びた耳を持つ樹上に生息するもこもこしたウサギはとりたてて強いわけでも経験値が高いわけでもないのだがーー。
「キリトさん。あいつの肉って確か……」
「ああ。絶品のS級食材って話だ……」
そう。プレイヤーの間では十万コルは下らないという代物だ。最高級のオーダーメイド武器をしつらえても釣りがくる額である。
そんな値段がつく理由はいたって単純。この世界に存在する無数の食材アイテムの中で、最高級の美味に設定されているからだ。
相手がこちらに気づいていない今ならばまだ、先制攻撃のチャンスがある。
俺は投擲用の細いピックを腰のベルトからそっと抜き出しーーその手を、別の手に止められた。
見れば、トーヤが俺の手に自分のそれを添えていた。
その口元が、にっ、と無邪気に釣り上げられる。
「ドロップ狙いなら、俺に任せてください。投剣スキルならそれなりに上げてます」
そう言って、トーヤは青い腰布の内側からスローイングダガーを取り出した。
自信ありげな瞳が、蘭々と光りながら俺に向けられる。
あのラグー・ラビットは俺が先に見つけたのだから、狩る権利は俺にある。
そこでもしトーヤに任せて≪ラグー・ラビットの肉≫がドロップすれば当然、そのアイテムは彼のアイテムストレージに収納される。そうすれば、いつでも持ち逃げすることが可能だ。
だが、転移結晶も持たないプレイヤーを確実に捕えられる自信が俺にはあったし、必ずドロップするとも限らない。
それに、出なかったらそれは単に俺たちに運が無かっただけの話だ。
俺は引き抜きかけていたピックを元に戻した。
「いいぜ。やってみろよ」
「はい」
一度頷くとトーヤは樹の上に狙いを定め、投剣スキルのモーションに入った。
やがて、その右手に握られた一本のダガーに淡い紫色のライトエフェクトが纏われる。
「ふっ……!」
トーヤの目がわずかに細められた次の瞬間、ダガーが素早く放たれた。
投剣 単発技 ≪
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