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機動6課副部隊長の憂鬱な日々
第102話:エリーゼ・シュミット、退院す
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俺が小さく頷くと、姉ちゃんは満足げに笑った。





それから30分ほど病室の椅子に座って本を読んでいると、
姉ちゃんが俺を呼んだ。

「ゲオルグ。お父さんたちが帰ってきたら、すぐに出たいから
 車いすに移るのを手伝ってくれる?」

「ん? ああ、いいぞ。どうすればいい?」

俺が尋ねると、姉ちゃんは部屋の隅の方を指差した。

「とりあえず、車いすを持ってきて」

姉ちゃんが指差した方を見ると、折りたたまれた車いすが置かれていた。
俺は車いすを広げると、姉ちゃんのベッドのそばまで押していく。

「ありがと。じゃあ、ちょっと乗り移るから落ちないように見ててね」

俺が頷くと、姉ちゃんはベッドの落下防止柵などを利用して
器用に車いすへと乗り移った。

「ふぅ。これは何度やっても緊張するわ」

「見てる方は、もっと気が気じゃないけどな」

「お母さんも同じこと言ってたけど、そんなに危なっかしい?」

「というより、落ちたらかすり傷じゃすまないだろ。心配なんだよ」

その時、ドアをノックする音が病室に響いた。
姉ちゃんが返事をすると、父さんと母さんがドアを開けて入ってくる。

「あら、もう車いすに乗ってるの?」

「うん。お父さんとお母さんが戻ってきたら、すぐに帰りたかったしね」

母さんは姉ちゃんの答えを聞いて、呆れた目を姉ちゃんに向ける。

「あんたは相変わらずせっかちね。小さいころから変わらないんだから」

母さんの言葉に、俺は昔のことを思い出していた。

子供のころ、姉ちゃんとおやつを買いに行くことがよくあった。
家の近くにあったスーパーに行くのだが、その道中では、すたすたと
自分のペースで歩く姉ちゃんに手をひかれているために、当然ながら
姉ちゃんよりも身体の小さかった俺は走らなければならず、
店に着くころには息も絶え絶えだった。
しかも、息を整えてようやくお菓子を選び始めたころには、姉ちゃんは
とっくに自分の分を選び終えていて、俺が選んでいるのを隣で
イライラしながら見張っていて、大抵は俺が迷っている間に
勝手に俺の分も選んでしまい、さっさと精算を終えてしまうのである。
もちろん、帰りも俺が走らされるのは言うまでもない・・・。

そんな記憶をさかのぼっていた俺は、思わず母さんの言葉に笑ってしまった。

「ゲオルグ・・・」

押し殺した姉ちゃんの声で我に返ると、姉ちゃんが無表情に
俺の顔を見上げていた。
恐怖を感じた俺は、あわてて姉ちゃんから距離を取ろうとするが、
それよりも早く姉ちゃんは俺の方に手を伸ばしてきた。
次の瞬間、俺の頬に激痛が走る。

「いでででで、やめてくれよ姉ちゃん!」

俺は姉ちゃんに抗議するのだが
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