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機動6課副部隊長の憂鬱な日々
第102話:エリーゼ・シュミット、退院す
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にあるお茶の入ったカップをテーブルに置くと、
自分自身は父さんの隣に腰を下ろした。

「2人とも、ずいぶん話が弾んでたみたいね。何の話をしていたの?」

「大した話じゃないよ。ただの雑談」

「ふむ。ただの雑談・・・ね」

父さんは俺の方を横目に見て、口元をゆがめながら言う。

「なんだよ、父さん」

「いいや。確かに大した話はできなかったと思ってね」

「なんだよ・・・感じ悪いなあ」

俺が口をとがらせて父さんに言うと、母さんが俺と父さんの間に割って入る。

「2人とも、朝っぱらからくだらない言い争いはやめなさい!」

母さんの荒っぽい物言いに、俺は父さんと無言で顔を見合わせると、
そろって小さく肩をすくめた。
そんな俺達の様子を見ていた母さんが、先ほどとはうってかわって
にこにこと笑っていた。

「それにしても、お父さんとゲオルグがこんな風に話せるようなるなんて
 つい半年前には思いもしなかったわ。それに、エリーゼも・・・」

母さんは感極まったのか、言葉を詰まらせ涙をぬぐう。
俺と父さんはその様子を見ると、お互いの顔を見合わせて苦笑するのだった。





1時間ほどリビングで話をしたあと、俺たちは実家の車で姉ちゃんが
入院している病院に向かった。
車を駐車場に置き、3人で病院の建物に向かって歩く。
姉ちゃんの病室の前まで来ると、先頭を歩いていた母さんが立ち止り、
病室のドアを前にして大きく深呼吸をしてから、ドアに手を伸ばす。
母さんがドアをノックする音が、静かな廊下で妙に響いた。

「どうぞー」

ドアの向こうから姉ちゃんの声が聞こえてくる。
母さんがドアを開け、先頭を切って病室に入る。
父さんがそれに続き、俺は最後に入った。
病室に入ると、すでに入院中ずっと着ていたパジャマから着替えた姉ちゃんが
背を起こしたベッドに座って、俺達の方を見ていた。

「あ、みんな。ずいぶん早いね」

「そういうあんたこそ、もう着替えてるじゃない」

「だって、この退屈なとこからやっと退院できるんだもん。待ちきれなくって」

姉ちゃんはベッドの上で伸びをしながら、晴れやかな表情で言った。

「退屈ってなあ・・・、退院までこぎつけたとはいえ、
 身体はまだまだ回復しきっていないんだから、気をつけないといけないよ」

父さんが姉ちゃんのほうを心配そうに見ながら言う。

「わかってるよ、お父さん。だからリハビリだって頑張ってるし」

「ならいいんだけどね。だけど、くれぐれも無理はしないようにな」

「うん」

父さんの言葉に頷く姉ちゃんの顔は、少し涙ぐんでいるように見えた。

そのとき、ノックの音が病室の中に響いた。
母さんが返事を
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