第二部
第二章 〜対連合軍〜
百四 〜長安〜
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私は頷くと、望遠鏡で長安の様子を見てみる事にした。
火の手は見えぬが、未だに各所から黒煙が上がり続けているようだ。
単なる小火騒ぎではなく、かなりの大火だったらしいな。
「孫策さん達が消し止めたんでしょうか?」
「恐らくな。張譲や廷臣共に素早い処置が執れるとは思えぬ」
「問題はこれだけ大火になった原因や。単なる火事って規模ちゃうで?」
城壁の向こう側までは見られぬ以上、宮城や市街の子細はわからぬ。
だが、立ち上る黒煙の量、眼に入る焼け跡の規模は尋常ではない。
「あわわ。ご、ご主人様!」
雛里の声に、全員が城門を見た。
「はわわ、城門が開かれちゃいました!」
「どういうこっちゃ?」
打って出てくるとは思えぬが、兵らは身構えた。
城門の向こうから姿を見せたのは、雪蓮ともう一人。
褐色の肌に長い黒髪、そして眼鏡の女子。
「朱里、あれは?」
「はい。冥琳さん、いえ周瑜さんです」
「ほう」
実際に目にするのはこれが初めてだが、なるほど理知的な面構えだ。
と、その隣にいた兵が白旗を持ち、此方に向かってくる。
「軍使のようですね」
「どうやら、戦う気はないようですね」
「せやな。歳っち、ええんか?」
「使者を断る理由などなかろう。ただし、構えは解くな」
「御意。皆の者、油断致すな!」
愛紗も霞も、得物を手に私の前に立った。
不測の事態に備えて、というつもりか。
この期に及んで、そのような事になるとは思えぬがな。
使者は私の前まで来ると、礼を取った。
「土方様に、我が主孫策寄りの言伝です」
「聞こう」
「はっ。我が主が土方様と直接、話がしたいと」
内密の用件ならば、明命を使えばいい筈だが……未だ、虎牢関に残っているのやも知れぬな。
常識で考えて、今の孫策には袁術からの監視が付けられているであろう。
仮にも朝敵として名指しされている私との会見が如何に危険な事か……知らぬ雪蓮と周瑜でもなかろう。
「ふむ。だが、場所と方法はどうするのだ?」
「土方様さえ宜しければ、すぐにでも此方へとの事です」
「ほう。雪蓮自ら参ると申すか?」
「はい。我が主並びに周瑜の二人で、勿論武器は一切置いて参ります」
私が手を出さぬと言う確信あっての事であろう。
無論、亡き睡蓮(孫堅)の言葉を忘れた訳でもなく、忘れるつもりもない。
その程度の事、先刻承知ではあろうがな。
「良かろう。朱里、雛里も良いな?」
「御意です」
「ご主人様が宜しければ」
使者は頷くと、手にした白旗を大きく振った。
それを合図に、雪蓮と周瑜が一気に駆けてくる。
「皆、手出したらアカンで。ええな?」
「はっ!」
「やっほ〜。久しぶりね、歳三」
「……雪蓮。親しき仲にも礼儀あり、だ
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