第二部
第二章 〜対連合軍〜
百四 〜長安〜
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数日が過ぎた。
「すると、虎牢関の方は全く連合軍を寄せ付けていないのじゃな?」
「はっ」
「そうか。この洛陽が戦火に包まれる事は、何としても避けねばの……」
安堵の溜息を漏らす杜若(協皇子)殿下。
虎牢関からの報告を聞き、こうして報告に参っている。
戦果は改めて確かめるまでもなく、全てが予想以上であった。
我が軍は堅牢な要塞、選りすぐりの将達、そして高い士気の兵らの奮闘が揃っているのだ、当然の結果と言えよう。
「土方よ」
「は」
「もう、この戦に何の意味もなかろう。何とか、連合軍を引かせる手立てはないのか?」
「難しいかと存じます。勅令が偽であるとの証明を、陛下自らなさっていただかぬ限りは」
「……しかし、それが如何に困難か。どちらを向いても困難ばかりじゃの」
杜若殿下は、小さく頭を振った。
「そう言えば。長安の様子、何かわかったか?」
「いえ、然したる事は。警戒が厳しく、手の者も思うに任せぬようにござります」
「そうか。何とか、姉様に連絡を取りたいものじゃが」
それすら思うに任せぬのが現状だ。
雪蓮らの目的も定かではなく、数を減らしたとは申せ十常侍も健在ではどうにもなるまい。
疾風(徐晃)に無理をさせる訳にもいかぬ。
「今一度、手立てを考えては貰えぬかの。この通りじゃ」
「殿下、頭をお上げ下さい」
「いや、私が頭を下げて済むなら安いものじゃ。必要とあらば、袁術の下に出向いても構わぬ」
全て覚悟の上という事か。
私の知る劉協とは違い、杜若殿下は無闇に実権を取り戻そうという姿勢は見られぬ。
この御仁ならば、仮に歴史通りになっても廷臣を犠牲にする事はあるまい。
「一度、孫策らと連絡を取ってみたいと存じます。悪意あっての行動とも思えませぬ故」
「任せる。何としても、姉様を……頼む」
「はっ」
とは申せ、妙案がある訳ではない。
皆に諮ってみるとするか。
「お兄ちゃん、大変なのだ!」
執務室に、血相を変えて鈴々が飛び込んできた。
函谷関から戻るように伝えてはいたが、それにしても帰りが急過ぎるな。
「慌ててどうしたんですかー?」
「だから、大変なのだ! 長安が火事なのだ!」
「何だと?」
思わず、風と顔を見合わせる。
「それは、朱里らからの知らせか?」
「そうなのだ。霞と朱里は長安に向かうから、この事をお兄ちゃんに知らせろって言われたのだ!」
「……うむ。風、すぐに出るべきだな」
「御意ー。恋ちゃんと愛紗ちゃんに伝えてきますねー」
「頼む。鈴々、とりあえずご苦労だったな」
「疲れたのだ……」
へたり込む鈴々。
函谷関からほぼ駆け通しだったのであろう。
「誰か、月を至急此所へ」
「はっ!」
廊下にいた兵が駆けていく。
城内が、
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