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その答えを探すため(リリなの×デビサバ2)
第20話 沈む心、甦る決意
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層深めた笑みを向けた。

「まぁ、一番はジュンゴにゃんと一緒に話ができ「やめ、て」……にゃ?」

 シャムスの視線の先にいる少年が俯いたまま彼女の言葉を遮ると、自分の体をかき抱くように腕をまわした。先程まで腕で支えていた顔が少しだけ見えるようになる。

 凍えているかのような顔だった。青白い顔色をし、口は強く食いしばっていた。目をうつろに開き、その奥にある瞳も、光を見出す事ができない。

「やめ、て…。ジュンゴは、ジュンゴは失敗した。シャムスに、いっぱい痛い思いをさせた。それを見てる事しかできなかった。
 守るって、約束したのに。あの時、この世界の縁を守るって、約束したのに。シャムスが傷ついているとき、見てる事しかできなかった」

 誰も瞳に写さないまま、子供らしくない低い声で感情を吐露する。ぼそりぼそりと、普段とは全く違う幽鬼の様な彼の表情と声に、その場の全員が声も出す事ができない。

「そんなこと……。シャムスさんは、こうやって無事じゃない。純吾君はちゃんと助ける事ができたよ」

 あえぐように、やっとの思いですずかが声をあげた。目の前にいるシャムスはちゃんと助かっているはずなのに、どうして彼があんなに暗くなるのか、彼女には純吾の心が理解できなかった。

 ただ、彼がやり遂げた事を、彼自身が否定してほしくなかった。その思いだけで鉛のように感じられるようになった重苦しい雰囲気の中、力を振り絞って声をあげたのだが、それが声に反応した彼の瞳に光を灯した。

 いつもの穏やかな光でも、生きるという意思に満ちた眩しいばかりの光でもない、激情に支配され、見たものを燃やしつくさんばかりの苛烈なまでの光を。

「違う、違うよ。
 少しでも傷付いたら、あいつらはやってくる。早く傷を治さないと、早く、早くしないとあいつらが……悪魔がやってくる!」

 純吾の目には記憶の一場面が写り込んでいるのだろうか。半ば狂乱したように唐突に立ち上がり、頭を両手で押さえながら叫ぶ。
 椅子が大きな音を立てて倒れ、純吾の悲痛な叫びが客間を満たす。予想だにしていなかった純吾の豹変に、今度こそ動ける者はいなかった。

「……やめて。もう、やめてっ!
ジュンゴは何もしてない。何も悪い事もしてないし、お前達の邪魔もしてないよっ!! だからもう、もうジュンゴの街を壊さないでっ!
 友達を……仲間を奪っていかないで!!」

 その場に倒れ込むようにしてうずくまり、血を吐くような悲鳴をあげる。9歳にしては大柄な彼の背が、今この時だけは酷く小さく、頼りない者に見える。
 そしてその姿を見て、その悲鳴を聞いて、ようやく忍達は彼の行動の理由を悟った。

 この前の街の被害と、そして今回何もできずにシャムスを傷つけてしまったという事。その二つの出
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