§43 暗躍する人々
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強張る。
「……おまえ」
須佐之男命の警戒するような表情。
「厄介な奴を連れ込んでくれたな……」
彼の言葉と同時に、空間が砕けた。
「ふむ。ここにいたか小僧」
無数の従僕を従えて、ヴォバン侯爵が須佐之男命の住処に現れる。
「な、なんでここに……」
「貴様が消えたのは転移だろう。我が従僕で探してもいない。幽世にいると踏んで従僕共で道を開いたまでのこと」
幽世に近い場所で無理をしたから色々なものを呼び出しているかもしれんがな、と老人は続ける。
「まぁ仮に神が顕現していたならば、貴様を潰した後でじっくり食すまでのことよ」
「くっ……」
身構えるが、護堂は自分の不利を悟っている。仲間の力を借りてようやく拮抗できる実力差。だが、今は一人。須佐之男命や黒衣の僧正の援護は期待できない。だが、やるしかないか? 覚悟を決めようとした刹那、紫電が二人の間を突き抜けた。
「――おまえら落ち着け」
「!?」
「貴様は……ほう、貴様も、神か」
思わぬところからの横槍に驚く護堂と、須佐之男命を一目で神と看破して、好戦的に笑う侯爵に対し、古き老神は酒を取り出す。
「ここで暴れられると、その、なんだ。困る。黎斗のヘソが曲がるとメンドくせぇ」
「おい!! ふざけている場合じゃ!!」
思わず怒鳴りつけようとした護堂だが、ヴォバンは興味を惹かれたように部屋をじろじろ無遠慮に見る。
「……ほう。ここがあの男の住処か」
「まぁ、飲め。アイツは今都心で戦ってる。多分ヤツの本気が見れるぞ」
そういうと須佐之男命は水盆を出す。手を一回叩くと水面が揺れて、荒廃した首都が見える。
「黎斗!?」
友の姿に駆けだそうとする護堂だが、思い直す。ここで自分が抜ければ、十中八九、須佐之男命とヴォバンの戦闘が始まる。今ヴォバンが手を出してこないのは二体一、という戦力差が原因だ。いくら須佐之男命でも一人では僧や媛を守りつつヴォバンを撃退するのは至難だろう。ここで均衡を崩す訳にはいかない。
「……くそっ」
結局、悪態をつくしかない。そんな護堂に須佐之男命が声を投げかける。
「わかってるじゃねぇか」
「……うるせぇ」
結局ここで黎斗の戦闘鑑賞会という名目のもと、ヴォバンを縛り付けておくしかないのだ。
(頼むぜ黎斗)
それも、黎斗がヴォバンの興味を引いているからに他ならない。もし、彼が眼前の老人を失望させた瞬間、老人は迷うことなく自分たちとの戦いを選ぶだろう。
(そうなったらエリカ達の簪も元に戻せよ……)
そんな意思を込めた目で須佐之男命を睨む。老神が、頷いた気がした
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