§43 暗躍する人々
[3/5]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
見つかったか」
呟いた彼女の背後が揺らめいた。猿が甘粕達を補足したのだ。大猿の探知能力は小猿程度とは比較にならない、ということなのだろう。甘粕の隠行すらも見破る神獣が、二匹。
「我に任せろ。この為の我だ」
駆け出す幼女は大猿の前へと秒を跨がず現れる。蒼へと変色した瞳を爛々と輝かせて。
「散れ」
瞬間、ジュワユーズの手が伸びる。鋭利な刃物と化した幼女の腕が大猿を襲い、幾重もの斬撃が迸る。鞭にも似た不規則な軌道での連続攻撃。悲鳴をあげる暇も無く、大猿が一匹、細切れになった。
「この程度か」
薄刃が縮み、幼女の腕としての輪郭が現れる。
「……!!」
目の前の事態に思わず硬直したもう一匹の大猿。それが、彼の命取り。その一瞬は、ジュワユーズが大猿の頭上に移動するのに十分過ぎる時間だった。
「次はおまえだ」
右足を軽くあげ、おろす。頭が、弾けた。脳髄を撒き散らしながら躯が倒れる。倒れながら
「他愛ない」
ゴシック調の服に血は皆無。返り血すら浴びずに神獣を葬った聖剣が、笑った。
「上です!!」
「うん……?」
甘粕の叫びに顔をあげるジュワユーズ。彼女の瞳に写るのは、上空から襲来せんとする中程度の猿――――が、石化する姿。
「――!?」
「……ふむ。主は"アレ"を使ったか」
一人納得する幼女の背後に石化した猿が落下し砕け散る。自らの手柄を誇るかのように雄鶏の鳴き声が周囲に響いた。
「これはまさかコカトリス!?」
更なる神獣の襲来に驚く甘粕だが、ジュワユーズの対応はそっけない。
「案ずるな。我が主に従う下僕の一だ」
腕を振る。それだけで無数の衝撃波が小猿の群を滅多切りにし、巨猿の身体に傷がついた。
「黎斗様は猿を殺すのは控えるのでは――」
「人間如きが口を挟むな」
碧眼で睨み付けてくるジュワユーズに師範は震え平伏する。
「申し訳ございません……!!」
「……ふん」
彼女の最優先事項は恵那の護衛だ。護衛をしつつ大猿達を生かしたまま無力化するのは彼女には少々荷が重い。大猿一匹程度なら可能だが、数匹もの無力化は不可能。父並の力があれば、また別なのだが。故に恵那に降り注ぐ災厄は、手加減無く全て叩き潰す。
「厄介な輩、か…」
巨大な――大猿の倍以上の――猿の眼が、こちらを標的に認識する。
「グガァァアア!!」
巨猿の腕が振るわれる。まともに直撃すれば即死の一撃だが、それを受けるような彼女ではない。前進し、僅かな隙間に身を潜り込ませる。
「ふっ!」
瞬時に刃化した右腕が踊る。連続する斬撃が巨猿に傷を与えるも、致命傷にはなり得ない。
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ