§43 暗躍する人々
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もう後が無いということ。ここで決めるしかない状態。彼ももう土壇場なのだ。圧倒的に見えるがあれだけの権能を長期制御するには莫大な呪力が必要な筈。いつ解除されても可笑しくない。
「黎斗、第二ラウンドと行こうか」
そこまで考えたところで、大地が割れる。剣の王が復活する。好都合だ。彼女は笑みを口に浮かべる。場が混沌と化せば化す程可能性は上がっていくのだから。
(あの方の権能、葡萄酒色の誘惑は必ず障害になる。今を逃せば勝機はおそらく永久に来ない。賭けるならば、今しかない)
全ての楔を解放したランスロットによる、黎斗一点狙い。武術に秀で、とは言っても三連戦目でランスロットと互角に張り合う線は薄い。突撃させれば、確殺出来る。あとは周囲のカンピオーネは大聖達がなんとかしてくれるだろう。万が一倒れても、それは彼らが己が求める存在で無かった、というだけでなんら痛手になりはしない。
(草薙様はヴォバン侯爵との戦いで深手を負っているし、何よりこちらにはいらっしゃらない。羅濠教主も破魔の主によって浅くは無い傷を負っている。無傷なのは冥王様とここにいるであろう黒王子様くらい)
手負いの魔王が危険なのは百も承知だが、黎斗の敵は斉天大聖だけではない。ペルセウスとドニ。更に魔王が増えたのだ。斉天大聖も魔王殲滅の条件を満たしていても不思議ではない。カンピオーネの性質上必勝とは言えないが勝ちの目は堅い。生還の目もある。こちらに向かってくる、という危険性もあるが、相手は全員黎斗が第一標的のようだ。――運が本当に、良い。
(ここまであの御方を消耗させることも、ここまでまつろわぬ神を増やすことも、ここまで状況を整えられることも。おそらくもう来ない)
手札を全て切る乾坤一擲の大勝負。だがおそらくはあの魔王を消せるであろう最初で最後の機会。
(叔父様……!!)
手札を、切る。最強の鬼札を。
(呼んだかね?)
彼女の騎士が、応えた。
「待て」
薄緑色の髪をした幼女が甘粕の隣にふわりと着地する。自らよりも長身な少女を軽々と抱え、気配は皆無。無音で降り立つ彼女の髪が深紅に染まった。
「……貴方は」
「我はジュワユーズ。水羽黎斗の従僕だ。恵那を預けるぞ。代わりにしばしの間、我がおまえ達の護衛をしてやる」
完全に意識の無い恵那を馨に預けて、幼女は灰の瞳を二人に向ける。どことなく誇らしげな表情なのは、久々に外界の空気を吸ったからか。はたまた主より命を下されたからか。
「確かに、承りました」
深々と頭を下げて、了承の意を示す。眼前の幼女は黎斗と異なり容赦がない。それがわかるから。
「
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