§43 暗躍する人々
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世界が、塗り替わる。それは闇。死の世界が現世を塗りつぶす。
「……」
死の世界で、青龍が空を舞う。己が威容を知らしめるように。饕餮が地を蠢く。己が存在を誇示するように。海を我が物顔で海魔が往く。己が存在を刻み込むように。何十何百と神獣が湧き、隊伍を組んで陣を成す。猿達――斉天大聖の眷属が全員石化したのは首都圏だけだ。
「な……」
首都圏の外へ散っていった眷属達の掃討が彼らの任務。小猿も中猿も大猿も、彼らの前には相手にならない。巨猿ならば相手になるが、それだけだ。東京タワーにも匹敵する猿が魔竜を殴り大地に落としても。鬼蜘蛛の糸が拘束し、マンティコアの群れが噛み付き、無数の兵士が弓を放てば、それで終わり。騎兵隊が戦場を駆け抜け、海賊船が砲撃を放つ。大騎士を歯牙にもかけない神通力広大な神獣達も、終わらない責苦の前に一匹、また一匹と散っていく。
「嘘……こ、こんな力知りません!!」
グィネヴィアは震える奥歯を噛み締めた。斉天大聖の復活までは予定調和、寧ろ上手くいきすぎた位だ。だが、最期に最大の関門が存在していたとは。
「これが……これが……破魔の主の、全力ッ!!」
計画を仕切りなおすか。そう考える。今ならまだ、撤退しても暗躍していたことまでは見抜かれないだろう。首都が壊滅的被害を負い、魔王とまつろわぬ神が大量に暴れている場所で、まともな情報が入手できるわけがない。
(ですが……あの御方を倒すなら今しかないことも事実……)
退く。それは可能だ。だが勝負に出るべきではないのか。魔女王は思考を張り巡らせる。加速する。情報を整理し、理解し、推測し。
(今なら周囲に魔王が居る……!!)
鋼の軍神による魔王殲滅の特権には条件があるが、それでも行使することも今ならば不可能ではない。何せこの狭い島国にはカンピオーネが七人、この近辺に限定したとしても五人も存在している。特権の使用条件など余裕で満たせる。
(更に度重なる連戦で負傷しているのが当然)
剣の王は来日している。これは確定だ。だが姿を見せない。これは何故か。ヴォバンとも、教主とも戦った筈は無い。もし日本に居るのならこの近辺にいるか栃木の方にいる筈。栃木に来ていたのならば自分たちが見ていなければおかしい。アレクは近くに居るだろうし、そもそも戦う理由が無い。ジョン・プルート・スミスも同様だ。つまり、ドニは黎斗と交戦し敗北したと考えることが自然。
(剣の王相手に無傷で突破は有り得ない。必ず手傷を負っている)
黎斗はその後に羅濠教主と交戦した気配がある。つまり三連戦目。保有する呪力も残りはそう多くは無い。絶対に。この場でこの大技を出してきたという事は裏を返せば、
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