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対決!!天本博士対クラウン
第五百十一話

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                  第五百十一話  楽譜を読むと
 六人でモーツァルトの曲の楽譜を読んでいく。その中で。
 華奈子は首を捻ってこう言った。
「あたしピアノは弾けないけれど」
「どうしたの?」
 ピアノではないがキーボードを使う春奈が華奈子のその言葉に問い返した。
「何かあったの?」
「うん、この曲ね」
 その曲の楽譜を春奈に見せる。そのうえでさらに言う。
「両手で弾けるのかなって思って」
「あっ、この曲は」
 春奈もその曲の楽譜を見て言う。
「両手じゃ無理よ」
「そうなの。やっぱり」
「手が三本はないと」
 話はモーツァルトらしからぬグロテスクなものになる。
「無理ね」
「そうなの、やっぱり」
「これはちょっと」
 春奈は頭の中でピアノをキーボードに換算してから話す。そのうえで演奏をイメージコントロールしてみたのだ。
 その結果だ。彼女はこう華奈子に答えた。
「無理だと思うわ」
「春奈ちゃんもなの」
「ええ、真ん中を弾かないといけないけれど」
 だがそれでもだというのだ。
「両手が塞がってるから」
「無理なのね」
「こんなのどうやって弾くのかしら」
 首を捻りさえする春奈だった。
「わからないわ」
「その曲は」
 ここで美奈子が春奈に話す。
「お鼻でも演奏するのよ」
「えっ、お鼻で?」
「お鼻で演奏するの」
「両手が空いていないからね」36
 だからだ。そうなるというのだ。
「そうするのよ」
「ううん、お鼻でも演奏するなんて」
「それまで使って演奏するなんて」
「モーツァルト、やっぱりね」
「只者じゃないわね」
「この曲のアレンジはね」
 美奈子はこのことも話した。
「多分無理ね」
「私も。キーボードでもね」
 両手の場合をメインに考えている。それでもだった。
「これは無理ね」
「そうね。そうした曲ね」
「私にとってもね」
 やはりその曲はそうなるのだった。モーツァルトにはこうした曲もあるのだ。


第五百十一話   完


                        2012・8・3
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