暁 〜小説投稿サイト〜
鋼殻のレギオス IFの物語
二十話・前編
[10/16]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
で行われている勝負を見ているリーリンの胸中は不安に駆られていた。
 それはレイフォンが傷を負っていることでもあるし、すぐ近くに座っている養父と友人であるクラリーベルの存在が理由だ。
 
 二人の試合は目で直に見るだけでなくモニターを通しても見る事ができる。
 操つられている機器や切り返しの際等時折見える姿にリーリンも大体何が起きているのか分かっている。
 弟たちが騒いでいるのも聞こえてくる。

 視線をレイフォンの方から外しリーリンは右の方にいる養父を見る。
 デルクは手を顎にやり眉根を顰め試合を見ている。長い間デルクと過ごしてきたリーリンには養父にとって何か納得がいかない事があるときの様子だとわかる。

「……やはり歪だ」

 デルクが呟く。
 
「何が歪なのお養父さん?」

 リーリンの問いにデルクは奥歯に物が挟まったような言い方で答える。

「何と言えばいいか……噛み合っていない。なるようになるはずのモノが、そうなっていない。一件レイフォンは上手く動いているように見えるが何かズレている。見たところ動きに迷いがあるわけでも無い。私が教えたはずのものと紙一枚分のズレがある」
「剣を使っているからじゃないの?」
「いや、アレはそういう類ではない」

 リーリンの問いを否定する。

「戦場の流れに身を任せ動くのが道理。アレもそれは理解している。だがこれはまるで舞台のように“そう動くこと”が決まっている。そんな歪さだ。流れが濁っている」

 リーリンには祖父が何を言っているのか理解できない。
 周りを見渡すがデルクのような顔はしていない。それは錬金鋼を腰につけている武芸者も同じだ。皆息を呑むようにして試合を見ている。
 デルクは苦い顔で戦場を見続けている。リーリン自身には試合は僅かな残像しか見えない。だが武芸者であり、そしてレイフォンの師であった養父には自分とも他の武芸者とも全く別のものが見えているらしい。

 もう一人だけ。デルクと同じく周りとは違った表情の一つ左に座る友人をリーリンは見る。
 クラリーベルも周りとは違った表情だ。もっとも、こちらはつまらなそうに細めた目だが。

 はあ、とクラリーベルが息を吐く。

「何かつまらないですね」
「そう?」
「ええ、デルクさんの言うとおりです。面白みがありません。確かに技量が高いといえば高い戦いではあるんですが、こう、胸が熱くなって思わず混ぜて欲しくなるようなワクワクがありません。サヴァリス様に追いかけられてるレイフォンならあるんですが」
「……ああ、うん」
「必死さとかが違います。あれは全身全霊の全力で逃げ惑いますからね。私も加わったらと思うと胸がワクワクキュ〜っとして思わず顔が赤くなっていまいます」
「……」

 無言になったリ
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2025 肥前のポチ