二十話・前編
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ドの体を通り抜けた。
(なん、で)
剣でガハルドの体を切りながらレイフォンの心の中はその声に満ちていた。
現状が理解できない。なぜ、この剣は今ガハルドの「右肩」に当たっているのだ。
本来ならばガハルドの拳と接触し、“不幸にも”剣は大きく弾かれガハルドの「首」を切り裂いていたはず。
なのに、どうして。
そう思いながらも今更振るわれた剣は止まらない。振るう力のままに、慣性のままに剣はガハルドの突き出た右腕を切り落とす。けれどまだ止まらない。踏み出されている左足へとそのまま一直線に剣は進む。
狼狽えるレイフォンは知らない。何故剣がそれなかったのか。
その理由は呆れるほどに単純で馬鹿らしい。
“ガハルドは弱すぎた”
レイフォンが戦う中で見積もり“これくらいなら大丈夫”だと見積もったよりも弱かった。だから一瞬本気を出したレイフォンの剣をまともに受けることすら出来ず容易く弾き飛ばしてしまった。
確かにガハルドは強い武芸者だ。だがそれでも天剣授受者になれるような化物とは違う。多少技量はあっても剄量が違いすぎる。
剄量の差は力の差。いくら技量があろうとも剄量が大ければそれを踏みにじれる。そういうものだ。ガハルドとレイフォンはそこが違いすぎた。そして剄量ほど過大ではないが技量もまた。
だがそれを見間違えたレイフォンの心から「何故」は消えない。消えないままに剣は太ももの付け根あたりからガハルドの左足をも切り落とし剄の余波がガハルドを倒す。そしてそのまま地面に突き刺さった剣は砕け散る。武器破壊技で脆くなっていた錬金鋼がレイフォンの大量の剄を受けついに耐え切れなくなったのだ。
「ア゛ア゛、ア゛……が……」
足元のガハルドが呻く。まだ生きているのだ。
止めを刺そうにも既に今の余波で砂塵はほとんど消えている。だれがどうみても決着は付いた。ここからの一撃の理由はない。
ならばせめてこのまま怪我で死んでほしいと願うがそれは叶わないだろう。医療技術の発達したここで、この程度なら処置を間違えなければ死なない。
もう、レイフォンには打つ手がない。
痛みと感覚から左腕の骨が折れている可能性は高い。
右の手に握る柄に刃は無く、左の腕は力無く項垂れ血を流し続けている。
腕を伝う血が絶え間なく雫となって地に零れ落ちていく。
(何で……どうして?)
そんな思いがレイフォンの心を駆け巡る。
家族を守れるはずだったのだ。なのに何で。
けれどそれはもう遅い。もう遅いのだ。
風が砂煙を運び去っていく。
観客たちに見えてきた光景は倒れた男性と立っている少年。歴然とした決着。
徐々
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