二十話・前編
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が一刻一刻と近づいていく世界が酷くもどかしく、そして甘美にガハルドは感じる。
拳と剣が僅かに触れかける。
自分でも驚く程の最高の一撃の出来に、そして高ぶる思いに五感は鋭敏になりまるで世界がスローモーションのようにさえガハルドには見える。
だからこそそれが分かってしまった。
レイフォンの目に確かな殺意が宿る。
その瞬間触れたはずの剣が視界から消え、ガハルドの拳は凄まじい勢いで弾かれた。
ガハルドは突如跳ね上がった剄量を間近で感じ叫ぶ。
(?! ――――〜〜〜〜〜こいつまさか―――ッッ!?)
その時になってガハルドは悟る。レイフォンの狙いを理解する。
目の前の相手は最初から自分を殺すつもりだったのだと。大人しくこちらに従っていた理由も不思議だったがやっと分かった。
わざとこちらの脅迫に乗り試合を勧め“誰の目から見ても同等”な試合を演出し最後に斬る。
故意ではないのだと。ただの事故なのだと。
周りにそう思わせんがために動いていたのだ。
手に傷を負い時間もない。煙に乗じて最後の攻撃を仕掛け、決死の攻撃の末のぶつかり合いにより軌道がズレ“誤って”殺してしまう。
十分起こりうる「事故」だろう。
この砂塵もわざとなのだろう。理由付けをするとともに自分が振るう所を周りから見られないようにするため。
剄が跳ね上がったのも練り上げたモノを隠していたのだろう。容易くできるとは思わないがそれをするための時間を確保する意味も砂塵にはあったのかもしれない。
恐らく離れていた者たちは剄の事を気づかないだろう。もしかしたら形だけの気配はその為に飛ばしたのかもしれない。
スローモーションの世界の中ガハルドは思考する。だがもう全て遅い。
ガハルドの肩口から熱い衝撃が走り、それが胴体を斜めに走っていくのが分かる。
ガハルドの心の中に様々な思いが走る。
最初から自分を殺すために動いていたレイフォンへの、こんな子供が人を殺すためだけに頭を使い動く恐怖。
最初から手加減されていた事への怒り。今の実力が本当の実力だというのなら、なんとも馬鹿にされた話だ。
思うことは色々と出てくる。恐怖、怒り、悲しみ、慟哭、憤慨……。
そして歪なものが一つ。
疑問。
体を通り抜けていく熱さに恐怖しながらガハルドは思う。
確かに最初、レイフォンはその目に確かな殺意を宿していたはず。
なのにこいつはどうして、
今はその目を驚きに見開いているのだろう?
熱がガハル
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