二十話・前編
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放つ。それは足場を壊し大量の砂煙が一面を覆う。
(これに乗じるつもりか)
辺り一面が見えない。会場にいる者達も何が起きているかわからないだろう。
ふと気配を感じそちらを見る。思った通りにレイフォンがいた。レイフォンはガハルドを見ると小さく頷き再度姿を消す。
(そういうつもりか。良いだろう)
始まってある程度経っている。互いにそこそこは血を流しいい塩梅だ。終わりにしようというのだろう。
恐らくこの砂煙も皆が見ている前で負けるのは嫌だとかその辺りだろうとガハルドはあたりを付ける。
それくらい乗ってやるか。そう思いガハルドは最後の一撃に備え剄を練る。
まるで形だけの剄の気配が左右に巻かれ、ガハルドの正面に確かな気配が生まれ向かってくる。
レイフォンも十分な剄を練っているのが分かる。だがガハルドとて負けてはいない。
最後の一撃としてガハルドは最高の一撃を放つ。
それは絶理の一。ルッケンスの格闘術を収めた者がその技のうちから一つ選び自らの必殺の技とした昇華させた絶技。
剛力徹波・開闢。
打ち込んだ拳の先から対象の体全体に剄が行き渡り対象の体内から震わせ動きを奪う技。込める剄の量や打ち込み方によっては震わせるだけでなく体内からの破壊も行える浸透破壊系剄技。ガハルドが選んだ絶理の一だ。
砂煙が揺れレイフォンが姿を現す。
剣を構え真正面から向かってきている。
負傷した左手は一応剣の塚元にあるがあれではロクに掴めていないだろう。レイフォンが剣を構えて迫ってくる。
大きく構えられた剣がガハルドへ向けて振られる。打ち合っていた時から比べれば大振りでゆっくりに見える。これで最後ということだろう。これならガハルドの一撃は確かに通るはずだ。
それに答える様にガハルドは渾身の力で踏み込む。
これで終わりだという事実が、天剣を手に入れられるという思いがガハルドの体を最高にまで持ち上げる。
踏み込む、体重移動、足からの力の伝導、腰の捻り、肩の柔らかさ、腕の連動。剄の動きから何に至るまで申し分ない、今の自分に出来る最高の一撃だと自賛出来るほど技と体が一致する。
地面が弾け、大気が悲鳴を上げる。そしてその右が放たれる。
―――絶理の一・剛力徹波・開闢
この試合中最高の一撃がレイフォンへと向かう。
この一撃はレイフォンの剣を弾き飛ばしその体を吹き飛ばしガハルドの勝利を告げるだろう。そうガハルドは確信する。
互いの剄の余波で砂煙は半分以上吹き飛ばされている。中心地にいる二人はお互いの姿をもう完全に各々から見えている。時折隙間から外が見える事からも観客からもすぐに見えるようになるだろう。
だが、ガハルドにはそんなことはもうどうでもいい。
己が拳と相手の剣
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