二十話・前編
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ーリンに気づかず、それに……、とクラリーベルが続ける。
「あの抑え。きっとレイフォンは……」
言い切る前にクラリーベルは首を振る。
「まあ、しょうがない事なんでしょうけど」
一層つまらなそうに目を細めクラリーベルが言う。
「まったく、めんどくさい事ですよ。サヴァリス様はきっと苛立ちを堪えて見ているでしょうね。……どっちにかは知りませんが。まあそもそも知ってるか知りませんが」
暫く近づけないでしょうとクラリーベルが呟く。だが、一体何のことなのか。
聞きたいとリーリンは思うが、きっとクラリーベルは教えてくれないだろう。なんとなくだが分かってしまう。
周りは皆試合に見入っている。二人の反応がおかしいのだ。一つ後ろのアイシャを振り返ればじっと試合場を見続けている。眼が動いていることからも見入っていることがわかる。やや眉根を顰めて目を細めているが、怪訝そうでもつまらなそうにもしているわけでもない。
左右の二人の様子に少しの胸騒ぎがしつつ、リーリンはレイフォンが戦っているだろう方へ視線を向け続けた。
(勝てる……勝てるぞ!!)
絶え間無い攻防を続けながらガハルドは思った。
ガハルドが明らかに優っている、というわけではないが戦況は十分に渡り合えている。決して相手に劣っているわけではない。
最初から比べればほんの僅かだが動きも鈍っているのが分かる。これなら勝てるとガハルドは思う。
サヴァリスは随分とレイフォンの事を評価していたが現状はこれだ。自分と変わらないではないかとガハルドは思う。
確かに歳を考えれば凄まじいがそれだけだ。
若先生と並ぶなど烏滸がましい。
そうガハルドは吠える。
(こんな小僧になど―――許せるものか!!)
その怒りのままに一層攻勢を強める。
“若先生が認める武芸者の子供がいる”
数年前から流れた噂。稽古の最中何度となく噂で聞いた言葉に、そして稽古の際にサヴァリス本人から聞かされた言葉にガハルドはもしやと思い色々と動いた。昨夜も今日の為に動いた。
だが、この程度ならば杞憂だったとガハルドは改めて思う。小細工などせずとも問題はなかったと。
真っ向から勝ち切れる、と。
(……まあいい)
今回のためにわざわざ”時間をかけて”仕組んだ事を思いながらガハルドは口端を僅かに曲げ嗤う。
道場の皆も応援してくれている。今代のルッケンスから二人目の天剣授受者が出るやもしれんと。出場が決まった時弟弟子の皆も喜んでくれた。
ずっと憧れていた背中に追いつくことが出来る。隣に並ぶことができる。
かつて教え、今ここにはいない一人の弟弟子のことをガハルドは思う。
彼
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