第四百六話
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第四百六話 人魂
華奈子もだ。ある日部屋の中で美奈子と一緒にいる時にその部屋の中に入って来たライゾウを上から見てだ。美奈子にこんなことを言った。
「ねえ、ライゾウってさ」
「ライゾウがどうかしたの?」
「人魂に似てない?」
こんなことを言ったのである。
「何かね」
「人魂ってあの漫画とかによく出て来る」
「そう、人の魂。夜にふわふわと漂ってるね」
まさにそれだというのだ。
「それに似てないかしら」
「そういえばそうよね」
そしてだ。美奈子もだ。華奈子のその指摘に頷いた。
そのうえでだ。美奈子はこんなことも言った。
「あれよね。あの有名妖怪漫画のね」
「ゲゲゲの鬼太郎とかに出て来る人魂にね」
「確かにそっくりね」
「でしょ?何かもうそっくり」
華奈子はさらにだ。具体的にどうして似ているのかも話をした。ライゾウがどうしてその漫画に出て来る人魂に似ているのかをだ。
「身体のところが大きくてずんぐりしてて」
「尻尾が細くて長くてね」
「色こそ違うけれど」
具体的に言えばライゾウはホルスタインの模様だ。顔のところが中央が白くなって灰色で二つになっている。耳は垂れている。
だが今はその形からだ。華奈子は言うのである。
「それでも。これって」
「うん、もう本当に」
「そっくりだから」
「人魂に似た形の猫なんてはじめて見たわ」
美奈子にしてもだ。そうした猫ははじめて見たのだ。
そして何気にだ。こんなことも言った。
「やっぱり。太ってるからね」
「そうそう。ライゾウあんたね」
華奈子は自分の使い魔、平然とした顔で部屋に入って来たそのライゾウに言った。
「太り過ぎ。デブにも程度があるわよ」
「何だよ、御主人と美奈子さんまでそう言うのかよ」
「だって事実だし」
「そうよね。どう見てもね」
華奈子だけでなく美奈子も言う。二人はそれぞれの机の席から足下に来ているライゾウを見下ろしてそのうえで言うのである。
「太ってるわよね」
「まん丸になってるわ」
「まん丸って。おいらそんなに太ってるのかよ」
ライゾウはむっとした顔になって言い返す。
「それで水木さんの人魂なのかよ」
「だからね。あんた本当にデブだから」
「それは事実よね」
主の華奈子はおろか美奈子にまで言われたライゾウだった。とにかく彼が太っているという指摘は二人からも来たのだった。それは事実である。
第四百六話 完
2011・7・22
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