第四百話
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第四百話 後ろ回り
美奈子が今からしようとしているものは。
「ううんと」
「前回りはできるわよね」
華奈子が双子の姉妹に問う。
「そっちは」
「できるわ。けれど後ろ回り、逆上がりはね」
「それはまだなのね」
「あれ、難しいわよね」
困った顔で華奈子に話す美奈子だった。
「何ていうかね」
「そう?あれなんかまずよ」
「その。度胸と意地?」
「そう、それ」
まさにそれだというのだ。
「それで何とかなるものよ」
「じゃあ。思いきり上にあがればいいのね」
「自転車に乗るのと同じで」
華奈子は自転車の話もした。美奈子も自転車は乗れる。それだけの運動神経は備わっているのだ。全く駄目というわけではないのだ。
「やってたらコツもわかるし」
「コツも?」
「そう、コツもね」
それもだとだ。美奈子に話すのである。
「わかるから。やっていけばね」
「じゃあ誰でもできるものなの?」
「そう。できるから」
安心していいとだ。美奈子にこんなことも話す。
「もう度胸よ」
「思いきりやって」
「そう、そして何度もやる意地ね」
その二つだった。大事なのは。
「じゃあ。早速ね」
「やってみるわね」
「あたしは見てるだけだから」
華奈子は何もしないというのだ。美奈子がやるのに任せるというのだ。
「やってみて」
「うん。思いきり上にあがって」
「そこから身体を前にやる感じでね」
やってみるといいというのだ。こう話をしてだ。
美奈子は実際に後ろ回り、つまり逆上がりを何度もしてみるのだった。
そうして何十回としているうちにだ。不意に。
それができたのだった。奇麗に回ることができた。
後ろから一回転してからだ。美奈子は驚きの顔で言った。
「今のが」
「そう、後ろ回りよ」
「今みたいな感じでやればいいのね」
「そういうこと。気持ちいいでしょ」
「ええ、できたら」
そのこともわかった美奈子だった。できなかったことができる、そのことにだ。
彼女は笑顔になりそのうえでだ。もう一度回ってみるのだった。
第四百話 完
2011・6・28
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