第三百四十五話
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第三百四十五話 小田切君の休日
小田切君にも休日はある。給料は手取りで月あたり四十万でボーナスは夏と冬に年二回、保険もちゃんとしている博士の研究所の休日はだ。
「あれっ、休日あったのかよ」
「いつもここにいるけれど」
ライゾウとタロがだ。こう本人に突っ込みを入れる。
「休日は何してるんだよ、一体」
「ここにいて」
「いつもと同じだよ」
これが小田切君の返答だった。見れば彼はプレステでアイドル育成ゲームをしている。研究所でよくゲームをしながら留守番をしているのだ。
「こうしてね」
「ゲームかよ」
「そればかりなんだ」
「一応家には帰ってるよ」
それはしているというのである。
「ただ。それでもね」
「ここにいるっていうのかよ」
「そうなんだ」
「だってここにいたら」
どうなるか。そのことを話すのだった。
「お酒も食べ物もただじゃない」
「この研究所って食費無料だからな」
「博士が出してくれるからね」
「だからなんだ。それに冷暖房は完備だし」
夏も冬もいいというのだ。
「それにトレーニングルームにパソコンにステレオもいいのがあって」
「風呂だっていいしな」
「サウナもあるしね」
「だからここにいるんだ」
それで休日も研究所にいるというのである。
「休日だから博士の騒動は聞こえないふりしたらいいしね」
「兄ちゃんもタフになったよなあ」
「本当にね」
ライゾウとタロは平然とこう話す小田切君にある意味尊敬の念を感じていた。
「普通の人間だったら絶対に博士の傍になんかいたくないのにな」
「どんなに待遇がよくてもね」
何故いたくないのか、理由は簡単である。人類史上最悪のマッドサイエンティストであり人間の命なぞ何とも思っていないからだ。しかも次から次に世界規模の騒動を引き起こす人物ともなればだ。好き好んで近寄りたがる人間もいないというわけである。
「けれどここに来たしな」
「だから休日もここにいられるんだ」
「よし、ここはこうして」
今はゲームに熱中している小田切君であった。
「それでこうやれば」
「やっぱりこの兄ちゃんもな」
「何かが違うよね」
「よし、上手くいったな」
今は二匹の言葉を聞いてはいなかった。ただゲームに熱中している。
そうして一段落ついたところでだった。
「お昼にしようかな」
身体を伸ばしながらの言葉であった。小田切君もまた非常にマイペースであった。何しろ危険区域に指定されている研究所で普通に休日を過ごすのだから。
第三百四十五話 完
2010・12・21
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