第三百四十一話
[8]前話 [2]次話
第三百四十一話 弟の為に
美樹は今編み物をしていた。その上をビルガーとファルケンが飛んでいる。そのうえで彼等は主に対してこんなことを言うのだった。
「それなのですが」
「何を編まれていますか?」
「マフラーよ」
それだと答える美樹だった。6
「それ編んでるのよ」
「成程、御自身のマフラーは御自身で編まれる」
「御主人らしいですね」
「あっ、それ違うわ」
だが、だった。美樹は使い魔達のその言葉を否定したのだった。
「私のじゃないのよ」
「御主人のではないとすると」
「一体どなたのですか」
「弟のよ」
彼女の弟の為のものだというのだ。美樹は弟思いの姉でもあるのだ。
「それなのよ」
「弟君のものとは」
「それはまた」
「だからね。色もね」
見ればだ。その色は美樹の色ではなかった。彼女の緑ではなかった。
「この色にしたのよ」
「赤ですか」
「その色にされたのですか」
「そうなの。ほら、暖色ね」
暖色と寒色の違いを意識しであった。
「どうかしら、この色で」
「そうですね。暖かい印象を受けていいかと」
「私もそう思います」
ビルガーとファルケンはその色をいいとした。賛成だった。
「問題はどれだけの長さにするかですが」
「どうされますか、それは」
「長めにするつもりよ」
こう話す美樹だった。
「その方が首に巻けるからね」
「そこまで考えてのことでしたか」
「我々はそこまでは考えませんでした」
「首に巻ければそれでいいと」
「こう考えていましたが」
「やっぱり長い方がいいからね」
それでだという美樹だった。
「まああの子の身長よりは長くはしないから」
「それだけ長くしてもですね」
「少し問題ですし」
「だからね。さて」
ここまで話してだった。美樹は編み物にさらに力に入れる。
今は自室にいる。そしてその中で自分の机をちらりと見て話すのだった。
「これが終わったらね」
「はい、学校の勉強ですね」
「そちらを」
「そうするわ」
こう話してだった。美樹は今は編み物に専念するのだった。真剣な面持ちで。
第三百四十一話 完
2010・12・5
[8]前話 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ