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対決!!天本博士対クラウン
第二百七十二話
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              第二百七十二話  博士とマルクス
「思えばじゃ」
「はい」
「あ奴はそもそも矛盾しておった」
 博士は忌々しげに小田切君に話す。二人でテーブルを囲みそのうえでザッハトルテとウィンナーコーヒーを楽しみながら話していく。
「マルクスはな」
「矛盾していたのですか」
「あの男がユダヤ系だったのは知っておるな」
「はい、それは」
 それについては小田切君も知っていた。マルクスが元々ユダヤ人であるのは歴史ある通りである。あまりにも有名な話であるのだ。
「しかし反ユダヤ主義じゃった」
「無神論者だったからですね」
「そうじゃ。ユダヤ人でありながらそのルーツを否定しておった」
 このことを言うのである。
「しかも女性の権利を主張しながらじゃ」
「やってることは逆だったんですか」
「娘達に対しては暴君じゃった」
 これも意外な素顔である。
「今もマルクスを信奉している人間はおるな」
「ええ、いますね」
 小田切君もマルクス主義は嫌いではない。しかしそれでも今だにそうしたことを信じている人間がいることも知っていた。
「それは確かに」
「十九世紀の思想や経済がそのまま二十一世紀に通用する筈もない」
 博士は冷静に述べながらそのウィンナーコーヒーを飲んでいる。
「まあそれは置いておいてじゃ」
「はい」
「あの男の主張はその時からおかしいと思っておったのじゃ」
「革命とかお嫌いなんですね」
「革命はただの破壊じゃ。破壊の後の創造はない」
 博士の趣味の一つは破壊である。しかしただ破壊するだけではないのだ。
「後に残るのは流血と廃墟だけじゃ」
「まあ革命はそうですね」
「図書館でただ本ばかり読んでおって現実なぞ何一つとして知らぬ男じゃった」
「じゃああの共産党宣言とかもですね」
「左様。そういうものだったのじゃよ」
 こう小田切君に話すのだった。
「それを言えば怒ってじゃ。わしを非科学的だと言ってきおったのじゃ」
「成程、そうだったんですか」
「わしが魔術の本を大英帝国の博物館から永久に拝借しようと思ってその本を持ち去ろうとしておったその時に会っての話じゃった」
「泥棒しようとしたんですか」
「いや、強奪じゃ」 
 余計に悪質である。
「丁度博物館員や衛兵達と大立ち回りをして出る時に会ったのじゃよ」
「その時からそんなことをしてたんですか」
「ただ図書館に置いておくよりわしが有効に使う方がいいじゃろ」
「物凄い勝手な解釈ですね」
「気にするな。とにかくじゃ」
 さらに話す博士だった。
「あの男とはそういう因縁があったのじゃ」
「そうですか」
 あらたにわかった博士の過去だった。その時から無法の限りも尽くしていたのであった。


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