第二百七話
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第二百七話 研究所の中には
六人の影達は博士の研究所に入ってみた。入ったそこはとりあえず異様な雰囲気が感じられる場所だった。
皆は影を通してその研究所を見回りながら。こう言い合うのだった。
「何か予想していたのよりもさらに」
「不気味?っていうか」
「廃墟じゃないわよね」
気配は感じるのに何故か廃墟に似たものも感じていた。
「ここって」
「間違いなく博士の研究所よ」
美奈子が華奈子に答える。
「それはもうわかるわよね」
「わかってるけれど」
それでもなのだった。
「何よ、この不気味な気配」
「そうよね。何か死者の声が聞こえるような」
「壁に顔が見える気がするし」
「怨念が感じられるし」
「床から手が生えてるみたいな」
赤音も美樹も春奈も梨花もその顔を思いきり曇らせてきた。皆博士の研究所全体にえも言われぬ不気味なものを感じ取っていたのである。
その不気味なものを感じながら。皆はさらに話す。
「これって何かしら」
「やっぱり博士の生体実験にされた人の怨念かしら」
「それしか考えられないわよね」
「あの博士ってだけだけ人を殺してきたのよ」
華奈子は影を通して研究所を見回り続けていた。そうしてその中で顔を曇らせて呟くのだった。
「あたしが感じ取るんだから相当なものでしょ」
「多分一万やそこらじゃ利かないわ」
美奈子も暗い表情になっていた。
「この妖気はね」
「一万やそこいらって」
「大体博士って気が向けばすぐに暴力団の人や暴走族の人や不良さんやチーマの人達とかを生体実験に使ったり兵器のテストに使ったりするじゃない」
博士の趣味である。博士はそうした存在が嫌いであり気が向けばすぐに暴力団の事務所に兵器を撃ち込んだり暴走族を捕まえて生体実験を行うのである。時々死ぬ際の断末魔を聞きたいからという理由だけで捕まえて惨殺したりすることもあったりする。
「それを考えたらね」
「それこそ一万や二万じゃ、なのね」
「ええ。それ位は普通にやる人よ」
美奈子は博士のことを実によく理解していた。
「確実にね」
「言うまでもないけれどとんでもない人ね」
「ええ。けれど」
ここで美奈子はさらに言ってきた。
「困ったわね。何か道がわからなくなってきたわ」
「あっ、そういえばあたしも」
華奈子もであった。
「何かこの研究所の中って迷路みたいだからね」
「ええ。これ以上進むのは無理かしら」
美奈子の顔が曇った。
「もう」
「そんな。まだ入ったばかりなのに」
華奈子も皆も残念そうな顔になった。研究所の中の探索ははじまったばかりだというのにもう暗礁に乗り上げてしまっていた。
第二百七話 完
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