第二百四話
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第二百四話 動く影
春奈の影はそのまま春奈の形をしている。見れば仕草も彼女そっくりである。
「動いてるね」
「そうね」
皆その影の動きを見て言う。
「じゃあ私もやってみようかしら」
「私も」
そして今度はそれぞれ春奈が今した通りに呪文を唱えてみたのだった。
「シャドウマジマジマーーーーージ」
「シャドウマジマジマーーーーージ」
するとやはり彼女達の影も動きだした。しかもその動きは彼女達の思う通りに動くものであり念じればそのままの動きを見せてくれた。
「あっ、こう動いてくれるんだ」
「成程」
皆その影の動きを見て楽しそうに言った。
「面白いじゃない、これって」
「こうやって動かすのね」
「そうなの。自分で念じた通りに動いてくれるのよ」
春奈は皆にも話した。
「この影はね」
「そうね。じゃあ博士のところに行けって念じたら」
「行ってくれるのね」
華奈子と美奈子は自分達の影を動かしながら春奈に尋ねた。見れば華奈子の影はブレイクダンスを踊っていて美奈子のそれはフルートを吹いている。それぞれ個性が出ている。
「そうなの。勿論使い魔達のもね」
「はい、こうやったら」
「それでいいのね」
「じゃあ」
赤音、美樹、梨花がそれぞれの使い魔達の影にステッキをやって呪文を唱えるとやはり同じであった。影が離れて独自の動きをしだしたのであった。
「うわっ、動いてくれるわ」
「見事見事」
「それじゃあこの影達で」
「ええ。博士のところにね」
春奈は三人に対しても言った。
「行けるわよ」
「流石にあの博士でもね」
華奈子がここでまた言う。
「影まで攻撃はできないでしょ」
「そうね。あの博士魔術も使うらしいけれど」
美奈子は何気に不吉なことを言った。
「流石にそこまではできないと思うわ。影から本隊を攻撃するのはね」
「そうね。じゃあ安心して行かせることができるわね」
「そう思うわ」
とはいっても今一つ自信のないような美奈子の返事であった。
「それよりもまずあのとんでもない科学とかで来るわ」
「そうね。じゃあ用心しながらこっそりと」
流石に華奈子も今回はいささか慎重である。
「行きましょう」
「ええ」
こうして六人と使い魔達の影が博士の研究所に向かった。ものや音は影を通してはっきりと見えていた。これまた実に新鮮な感覚であった。
第二百四話 完
2009・6・22
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