第百八十三話
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第百八十三話 五人目の手懸かりは
三人でボートを漕ぎつつさらに向かう四人。美奈子は舵を取りつつ片手でオカリナを吹いている。華奈子は彼女がオカリナを吹いているのを見て尋ねた。
「何でオカリナなの?」
「片手は舵に使ってるから」
だからだというのだ。見れば美奈子は確かに左手で舵を取っていた。そして右手にオカリナを持ってそのうえで吹いているのだった。
「だからよ」
「それでなの」
「ええ。オカリナだとこういうふうにも吹けるじゃない」
「確かにね」
華奈子もオカリナを吹くからそれはよくわかった。
「それで吹いてその音でなのね」
「ええ。調べてるけれど」
言いながら探る目になる美奈子だった。
「あれ?」
「あれって?」
「何処かしら」
今度は首を捻るのだった。
「何か。出たり消えたりしてるけれど」
「出たり消えたりって?」
「これってどういうことかしら」
こう言ってまた首を捻る。
「プールの中を出たり消えたりしてるけれど」
「何処のプールなの?」
「それはこの先よ」
丁度今進んでいる先を指差す美奈子だった。
「この先は広くなっているけれどね」
「お池みたいになってるってことよね」
「ええ。そうなっているけれど。その中で」
「出たり消えたりしてるの」
「何でかしら」
こう言って首を捻り続ける。
「これって。何なの?」
「あたしも聞いてもわからないけれど」
華奈子もそう言われても何がどうなっているのかわからなかったのだった。
「ちょっとね。何なのかしらね」
「わからないわよね」
「ええ。わからないわ」
また言う華奈子だった。
「けれど。とにかくそこにいるのね」
「ええ、それはね」
間違いないと頷きさえする。
「間違いないわ。お池にいるわ」
「了解。じゃあ赤音ちゃん、梨花ちゃん」
「了解」
「わかってるわよ」
二人は華奈子の今の言葉に笑顔で返してきた。
「お池にね。このまま行きましょう」
「そうね。そこに五人目がいるんだし」
「さて、誰かしら」
とにかくそのお池に行くことは決めた。そのうえでボートを漕ぐのも舵を取るのもさらに気合を入れて向かう四人なのだった。五人になる為に。
第百八十三話 完
2009・4・13
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